天沢夏月「そして、君のいない九月がくる」感想

天沢夏月先生の「そして、君のいない九月がくる」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

表紙絵の女の子はヒロインの美穂。男の子は主人公の恵太。主人公と書きつつもほとんど登場しません。

 

バッサリ書くと高校生の男の子3人と女の子2人の青春小説でした。私自身青春小説が苦手な人間で「そして、君のいない九月がくる」も読んでいる最中に「あぁ、この手の青春小説は苦手だ」となりながらも読み終えました。

 

好きなんですけどね、青春小説。ただ読んでいると恥ずかしくなってしまってどういう顔をして読めば良いのか分からなくなるんだよ。主に自宅で本を読んでいるので無表情で読めば良いのですが、本当に読んでいると何故か恥ずかしくなるから無表情を貫き通せないという。

 

たぶん同じような人は私以外にも居るはずと信じている。

 

また、個人的に厄介だったのは私運動嫌いなんですよね。なので「陸上部」や「バレーボール部」とか「長距離走」という単語を聞くだけでも結構ダメでその点でも「この本読み切れないかもしれない」という不安が有りましたが読めました。

 

けど、キャンプへ行こうとは思いません。今後も永遠に

 

 

あらすじ

高校3年生の美穂、恵太、莉乃、大輝、舜の5人は夏休みに烏蝶山へキャンプへ行く約束をしていた。

 

しかし、夏休みになる前に恵太が事故で亡くなってしまう。「山へキャンプへ行こう」と言いだした恵太が亡くなってしまい残り4人でキャンプへ行く予定はなくなった。しかし、恵太が亡くなった事故現場はキャンプで行く予定だった烏蝶山だった。

 

4人は「恵太が亡くなった理由が事故ではないのではないか」と思いつつも夏休みを迎えた。

 

その中でのある日、美穂は自宅で気分が沈んでいた時に外から自分の名前を呼ばれる声が聞こえた。その声の主は亡くなったはずの恵太の姿をしたケイというドッペルゲンガーだった。

 

ドッペルゲンガーのケイは恵太が亡くなった所まで来て恵太の願いをかなえて欲しいと美穂に伝え、4人とケイは恵太の亡くなった烏蝶山まで行く事になる。

 

登場人物

主な登場人物は以下の5人。

 

・結城恵太

・花野美穂

・西園莉乃

・横山大樹

・榎本舜

 

メインとなる登場人物が5人というのはなかなか多い。登場人物1人1人ずつの視点で物語がそれぞれ書かれるのですが厚くは書かれていませんでした。なので、全員を小説の中で掘り下げられてはいなかったので個人的には上記の5人誰にも強い感情を持つ事が出来なかった。

 

その分キャラクターに潜入する事無く客観的には読む事が出来たんですけどね。

 

また、性格の違う5人が居る事により、高校生の時に味わうで良い感情または悪い感情が網羅されているようにも感じた。

 

結城恵太

最初から亡くなっている主人公。恵太より恵太のドッペルゲンガーのケイの方が主に登場しているので恵太を主人公としてよいのか分かりませんが私の中では恵太が主人公でした。

 

陸上部に入っていて、短距離でインターハイに出る程の実力の持ち主。

 

両親が離婚し、父親に引き取られ父親と2人暮らし。父親が多少DV気質の父親で恵太自身が「僕は必要ない」と思い、自殺をし、死ぬ事を考えていた。

 

花野美穂

ヒロイン。恵太の短距離走を見て短距離を始めた。先生には「長距離の方が向いてるんじゃないか?」と言われているが、恵太の短距離に惚れて短距離を続けている。

 

「ザ・ヒロイン」という性格で真っ直ぐ。困っている人を絶対に助けるタイプの人間が美穂です。

 

美穂が恵太の家の都合を知っていたり恵太が「自殺したい」と美穂に伝えて居たら美穂は毎日恵太に電話してるんじゃないかと個人的に思っている。たぶん、美穂は見知らぬ人が「死にたい」と言っていても助けるタイプの人間。本当に良い子でした。

 

西園莉乃

ヒロインとは真逆で物事を結構疑う性格の持ち主。ケイの事も最初はほとんど信用していませんでした。寧ろ莉乃のような反応が普通の人の反応だとは思うけど。

 

莉乃を除く4人は体育会系ですが、莉乃は文化系で運動が苦手。なので、歩いて烏蝶山へ向かっている最中、浮いているドッペルゲンガーのケイに苛立ちが隠せなかった。

 

莉乃だけが恵太と恵太の父の関係を知っていた。そして、恵太が「死にたいと思う」という事も莉乃だけが知っていた。なので、莉乃は恵太の死が事故ではなくて自殺であり、かつ防げなかった自分が悪いと思っていた。

 

莉乃はヒロインとは違って強気な発言が多いですが、5人の中で1番人の心が分かる子だと思いました。

 

横山大樹

恵太より大樹の方が主人公の雰囲気がありました。

 

大樹と恵太は美穂の事が好きで、大輝は恵太に嫉妬しており、美穂に嘘をついてしまった。つまり、大樹と恵太の間は恋のライバルのような関係でした。しかし、美穂は恵太の事が好きで大樹もその事を知っていました。なので、より美穂は恵太の事を気にかける事が嫌だった。

 

それは恵太のドッペルゲンガーのケイに対しても同様であり、美穂がケイに気に掛けると大樹は不機嫌になる。

 

偏見かもしれませんが、大樹のような男性は世の中に沢山居るように感じます。

 

榎本舜

陸上部で、恵太とは陸上でのライバルという間柄でした。

 

序盤の章で舜目線で物語が書かれますが、結構重い話でした。「そして、君のいない九月がくる」の中では1番舜の内容が暗い話のように感じました。

 

舜は恵太に「お前さえいなければ俺がインターハイに出れたのに!」と伝えた事により、恵太が自殺してしまったのではないか?と思っていたのです。ケイに「恵太の死は自己だった」と言われても舜は「俺のせいだ」と考えてしまう。

 

確かに「お前さえいなければ」という発言はよろしくないですが、「自分のせいで恵太が死んだ」と自分を責めている点からも舜の人間の良さが伝わる。

 

世界五分前仮説

ドッペルゲンガーとかありえない!」と思う方へお送りする言葉があります。「そして、君のいない九月がくる」という本は創作物であり小説です。実際の物語ではありません。

 

っと書きつつも私は読み終えた現在も「ドッペルゲンガーを使用するとはなかなか強気な姿勢だな」と思っています。

 

けど、ちょっと読み直してみて最初のページから数ページの「世界五分前仮説」について語られている所を読み直すと「あぁ、こういうのも有りかな」と思えるようになりました。

 

「世界五分前仮説」とは世界が五分前に作られたという考えです。私の「ドッペルゲンガーとかありえない」という感情を含め私の存在も五分前に出来たという説です。

 

そう考えると結構納得出来ませんか。

 

この「世界五分前仮説」は最初から最後まで何となく頭に入れて読むべきだったなぁと読み終えた後多少後悔しています。

 

恵太から美穂への遺言

「そして、君のいない九月がくる」の中で私にとっての最大の見せ場がこのシーン。

最後の見開き1ページで語られたのが恵太から美穂への遺言です。見開き1ページを長いのか短いのかは読み手の感覚ですが、私にとっては大変短い。

 

その短い間で読み手を泣かしに来ているのが「そして、君のいない九月がくる」です。

 

途中から読んでいて「あぁ、たぶん美穂が死んでいるんだろうなぁ」と思い予測通りの結果になりました。しかし、いつ読んでも残された人に対しての「遺書」や「遺言」系統の話にはどうしても泣かされてしまう。

 

この本の中では恵太から美穂に対しての遺言。その後に遺言を届けた恵太のドッペルゲンガーのケイは居なくなります。そして、本当にこの世から恵太もケイも消えたのです。

 

よくあるパターンなので日ごろ多くの本を読んでいる人にとっては「またこのパターンか」と思われてしまうかもしれませんが、私は「またこのパターンか、うん泣ける」というタイプの人間なので泣きました。

 

「そして、君のいない九月がくる」を読み終えて

上記で散々「青春小説は読んでいると恥ずかしくなる」と書き若干この本に対しての嫌悪感を書きましたが感動させていただいた。「読んでいて恥ずかしい」と思うのは最初から後半までで、後半からは感動させに来ていました。

 

1つ気になる点では、最後のシーンで美穂のドッペルゲンガーが崖から飛び降りるのは「ちょっと無理やりじゃないか?」と思ったぐらいです。

 

ドッペルゲンガーであってもね。なんかちょっと納得できない。

 

個人的にいぬじゅん先生の「夢の終わりで、君に会いたい。」に似ている本でした。恵太と美穂の関係と「夢の終わりで、君に会いたい。」の主人公とヒロインの関係が似ている。「夢の終わりで、君に会いたい。」は2人とも生きてるんですけどね。

 

mikanbook.hatenablog.jp

 

「そして、君のいない九月がくる」をオススメな人

・軽い青春小説を読みちょっと泣きたい人

分類はライトノベルでもちろん軽く読める本ですが、1章1章が短いのでよりサクサク読める印象でした。一応ミステリー部類に入る内容でもありますが、考えながら読む内容ではないので、軽く読めます。

 

しかし、軽く読んで「あぁ、もうこの本読み終わるわ」という所に泣かせるシーンが見開き1ページでやってくるのでお気をつけを。

 

・若い時に友達が居なかった人

本当に友達が1人も居なかった人にはオススメできませんが、私のように「親しい友達は居ない青春時代」を過ごした人にはオススメしたい。友達とキャンプどころかテーマパークすら私は行った事無いからね。疑似体験できます、この本では。

 

・スタンドバイミーが好きな人

また、「スタンドバイミー」という洋画も多少テーマにしている作品でもあり、文中にもよくスタンドバイミーについて書かれていました。私は個人的に洋画が苦手なので見て居ませんが、スタンドバイミーが好きな人は1度読んでみるのがオススメできそう。

 

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櫻いいよ「交換ウソ日記」感想

櫻いいよ先生の「交換ウソ日記」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂くのをお控えくださいませ。

 

 

「今時交換日記かぁ、アナログだ」と思ったのはきっと私だけではないはず。科学の進歩を利用したデジタル機器は使用しないとか昭和かよ!っと思いました。もしかして「本当にこのお話は電子機器が発達していない現代以外の時代なのか?」と思ってしまいましたが物語の中でメールを使用しているシーンは有りました。

 

現代のお話だ!っと思いこれほどにまで安心した物語は初めてだと思う。

 

しかし、物語の最後まで交換日記は続けられました。

 

手書きの文字だから伝わる事、伝わらない事が有り交換日記というデバイスが良い味を出しているお話だったと思う。これを読んで私自身、小学生の時クラスメイトと回していた交換日記と手紙を思い出した。

 

 

 

あらすじ

ヒロインの高校2年生の希美は移動教室先の机の中から「好きだ」と書かれた手紙を見つけた。その手紙の送り主は学校内で女子生徒からも男子生徒からも人気のある瀬戸山からだった。

 

しかし、瀬戸山は希美に手紙を送ろうとしていたわけではなく、江里乃に手紙を渡すつもりだった。つまり、間違えて希美に手紙を渡してしまった。

 

希美は「どうして関りの無い瀬戸山から突然ラブレターを貰うんだろう?何かの間違いだろう」と思ったが、「お付き合いは出来ません」という趣旨の返答を瀬戸山の靴箱へ入れる。

 

間違えて手紙を渡したとは気づいていない瀬戸山は、江里乃の事を諦める事は出来ず「まずは友達からで良いから」という事で瀬戸山と希美は交換日記を始める。

 

瀬戸山は交換日記の開いてが意中の江里乃ではなく、希美とは知らずに。

 

登場人物

ヒロイン:黒田希美

自分のやりたい事、自分の欲しい事を伝える事により「誰かが傷ついてしまうのではないか」と思い上手く自分の気持ちを伝える事が出来ない高校2年生。得意教科は英語。

 

私は「こんな高校2年生めったに居ない!」と感動してしまった。物凄い良い子。かつ、嘘をつくのが苦手。

 

現役女子高校生に対して大変失礼なのだが、女子高生ってのは自由で「え?そんな事やる?」みたいな突拍子もない行動に出る印象。自己主張も強くなるべく自分を通す印象が私にはあった。

 

確かに「言いたい事言えよ、さっさと」と思う場面がちらほら有り周りをイラつかせるケースもあるかもしれないが、相手を思っている事に変わりはなく、相手を思いやれる良いヒロインだった。

 

主人公:瀬戸山

ヒロインの希美とは真逆で伝えたい事は何も考えずにズバッと言える性格の高校2年生。得意教科は理系科目。

 

希美は「良い子」という印象でしたが瀬戸山は単純に「イケメン」、これに尽きる。少女漫画に登場する王子様をイメージして頂ければ間違っていない。よく見たら王冠被ってるかもしれない。

 

おばあちゃんと妹思いの優しいお兄ちゃんでもある。

 

私は「絶対この瀬戸山っていう人間を私は好きにならずにこの物語を読み終えるだろう」と思いながら読んでいましたが途中から惚れました、すいません。

 

希美と瀬戸山が付き合うという結末を知った上で読んでいたので、「江里乃に告白しておいて、どうして希美に移り変えるんだ!」と思いながら読んでいたからね。読み終えてから「最初から希美の事だったのかよ!勘違い男め!」という事で好きになりました。

 

江里乃

生徒会役員を務めており、成績も良く容姿も良くて多くの生徒に憧れの的になっている希美の同級生。

 

瀬戸山の性格と一緒で思った事をズバズバ言ってしまう事が多い。江里乃自身も「きつく言いすぎた」と反省する面もあり、強く物事を言わない希美を尊敬している。

 

優子

「ザ・女子高生」という印象の希美の同級生。世の中の多くの女子高生は優子みたいな子なんだと個人的には思っている。

 

ウソの交換日記

瀬戸山が江里乃に渡したつもりだった「好きだ」と書かれたメモ書きのラブレターが誤ってヒロインの希美に渡ってしまい、希美が江里乃のフリをし続けて瀬戸山と交換日記を続けた事により「交換ウソ日記」が出来た。

 

良く言われるのですが「1つウソをついたら重ねてウソをつき続けなければならない」この嘘の交換日記はその通りになりました。

 

なるべく江里乃のフリをして交換日記を書く希美ですが、「デスメタルの曲が好き」だったり自分の事を書いてしまう。ここからも希美が嘘をつくのが下手な良い子なんだと分かる。

 

希美の心情

希美は瀬戸山と仲が悪くなりたくないけれど、「交換日記の相手は江里乃ではなく、私でした」と伝えてしまえば楽になるかもしれない。けれど確実に瀬戸山とは仲が悪くなってしまうという不安。

 

また、瀬戸山は江里乃が好きで江里乃に告白をしたわけで、希美の事は最初から眼中には無く、交換日記が終わってしまえば瀬戸山とは関りが無くなってしまう可能性だってあった。

 

そこで瀬戸山と関わりを持ち続けるには「嘘に嘘を重ねる交換日記」を続けなければならなかった。

 

私は嘘をつき続けた事が無いので分かりませんが、高校2年生で長期間の嘘をつき続けるというのはどれだけの精神的疲労だろうか。と考えると心が痛む。

 

瀬戸山の公開告白

最大の見せ場が瀬戸山の公開告白だと思っています。私は「絶対に瀬戸山に惚れない」と思いながら読んでいましたが、この瀬戸山が希美の教室へ行き瀬戸山がブチ切れながらクラスメイトが多く居る中で告白したシーンを読んで惚れました。

 

これが無ければ瀬戸山に惚れる事が無かったのに!っと若干悔しい思いをしましたが、気にしません。それぐらいに瀬戸山の希美に告白するシーンは良かった。

 

「交換ウソ日記」を読み終えて

元が携帯小説という事もあり比較的読みやすい作品でした。一気に読めるぐらいに読み心地は良い作品。

 

「こんな恋愛をしたい!」と思う人が多いんじゃないでしょうか。櫻いいよ先生の作品はいくつか読んできましたがどの作品も同様に「こんな恋愛をしたい!しかし無理だ!けど小説内では夢を叶えてくれる素敵!」という作品が多い。

 

最後に新しい交換日記が瀬戸山から希美に渡されて正直「この先もこの2人はアナログで伝え合うのか、昭和か」と突っ込みました。けどこういう手書きで文字を伝えあう関係ってのも良いよね。

 

この先2人が上手く行くかは分かりませんが瀬戸山の発言の「そんなもん今から考えても仕方ないだろ」という発言から「そうだね、うん」と読んでる側も納得してしまった。

 

「交換ウソ日記」がオススメな人

少女漫画が好きな人

何度も書きますが瀬戸山が凄いイケメンです。眼鏡が好きな人に朗報ですが、瀬戸山は自宅で勉強する際には眼鏡を着用します。眼鏡大好きな私から言わせればもっと早くこの「瀬戸山は眼鏡を着用する」という情報が欲しかったぐらいです。

 

高校時代の雰囲気に戻りたい人

読みながら「あぁ、こういう同級生居たなぁ」と思いながら私は読んでいました。とりわけ優子みたいな同級生。そして、江里乃みたいな子も確かに1人居た。

 

希美と瀬戸山との恋愛ストーリーも良いのですが、希美とクラスメイトの友情関係もなかなか面白いのでその点にも着眼して読む事が出来ます。

 

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古宮九時「死を見る僕と、明日死ぬ君の事録」感想

古宮九時先生の「死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録」を読みました。この先からネタバレが含まれているのでネタバレ苦手な方はご遠慮ください。

 

題名からして大変物騒な雰囲気のするお話ですが、その通りで内容もそこそこに物騒。途中から終わりにかけての展開は正直夢に出てくるレベルで怖さを覚えました。普段読書する時間が寝る前の私はそこそこにつらかった。

 

表紙だけ切り取れば「ん?なんの話だ?とりあえず女の子かわいい」で終了しそうですがそれだけでは終わらない。

 

この女の子がショートカットという理由が読んでいると理解出来るので最低限「この女の子はショートカットだ!!」という事を覚えながら読んで頂くと良いのかもしれない。

 

女の子はロングヘアー派なんですけどね、私。

 

 

あらすじ

主人公の「僕」は「死ぬ人が幻視として見えてしまう」という特殊能力を持っている。頻繁に人の死を幻視として見ているがたとえ見ず知らずの人の死だとしても大変つらい事だった。

 

この「幻視」を「彼ら」と主人公は呼んでいた。

 

主人公は学校へは通ってはいなかった。いわゆる不登校。母親は世間の目を気にして外出させたくはないが、主人公は郊外に居る鈴さんに会うために出かけた。

 

この鈴さんは人間ではなく幻視。つまりいつかここで死ぬ人の姿。

 

「日常の話」や「見えた幻視」について鈴さんと会話をする主人公だったがある日この公園で鈴さんの幻視に似た女性に出会う。それは紛れもなく「似た女性」ではなく近い未来または遠い未来に無くなる本物の鈴さんだった。

 

ざっくりとした説明

この物語は14の章とエピローグで構成されている物語です。

 

1章から4章

僕と幻視ではない鈴さんが出会い初めて2人で死ぬはずだった女子高生を助けるお話。

 

5章から8章

電車で女性の自殺に巻き込まれて死ぬはずだった男性とその女性を救うお話。

 

9章から11章

多くの幻視を助けてきた主人公と鈴だが、「突然消える幻視」や「突然濃くなる幻視」の奇妙な幻視に出会う。そして、主人公が鈴に分かれを切り出す話。

 

12章からエピローグ

主人公は過去の自分の事を思い出した事により、奇妙な幻視は「殺人事件によって亡くなる人の幻視」という事を知った主人公は鈴の幻視が今までずっと薄かった事が「殺人事件に巻き込まれて死ぬ」という事と知った。

 

登場人物

主な登場人物は2人

・主人公の僕

・ヒロインの瀬崎鈴子

 

主人公の名前は最後まで分かりませんでした。この物語において主人公の本名はそこまで重要ではないので問題はないでしょう。個人的には日本名よりかは若干キラキラネーム感のある名前だと思ってる。

 

主人公:僕

「幻視が見える」という事で大量殺人事件に目の前で巻き込まれて精神病になるちょっと可哀相な人。確かに小学生の時に目の前で殺人事件起きたら誰でもトラウマになるよ。引きこもりにもなるよ。

 

その僕に対する親がなかなか冷たい印象で残念だった。物語に対してじゃなくて純粋に「この親もっと子どもの事考えろ」って思ったからね。けど、親も「変な物が見えるちょっとヤバイこの子」って思ってストレスを抱えてたんだろう、きっと。最後は両親と主人公が和解している雰囲気で安心した。

 

最後の最後で「主人公が小学生」という事が判明しますが、全く気付かなかった。ずっと大学生だと思いながら私は読んでいました。確かに読み返せば「うん、そうだね。主人公は小学生だ」と思える節が沢山あったので種明かしされる前に分からなかった自分に残念だった。

 

中学生になり幻視が見えなくなった主人公にはこれから過去の事を引きずるなとは言えないけど、引きずり続けても普通の中学生をやり、高校生をやり大学生をやり生きていて欲しい。

 

それでもこんなに行動力があって頭の良い小学生はなかなかいないはず。江戸川コナン君が浮かんでしまった、正直。

 

ヒロイン:瀬崎鈴子

小学生の主人公の話を真摯に受け止めて行動する純粋に良い人。世の中鈴子みたいな人ばかりになれば良いと思ったが、鈴子が運転する車だけには何となく乗りたくない。

 

おっちょこちょいすぎる。それが可愛いんだけどね。そして元気も貰える。時には元気が一瞬で無くなるけど。

何気ない主人公と鈴子の会話が本当に面白かった。永遠に続けてくれ2人で。

 

そして、ただおっちょこちょいなだけじゃなくて頭も回る。実は演技小学生の主人公に合わせてドジなキャラクターを演じてるんじゃないのかと思うレベルで機転が聞く。

 

「鈴子が頭が良い」と思ったのは後半のシーンでベンチの下にバッドを仕込んで居たり、服の下に厚い雑誌を仕込み刺されても多少平気なように対策していた事。

 

純粋に鈴子が「命は何よりも大事だから!」という考えで居ただけの装備なのかもしれないけど。

 

本当に鈴子が生き残って良かったと思う、つまらない言葉だけど。

 

故人:神長智樹

主人公が名乗っていた名前の人物。大量殺人事件で主人公を守る為に犠牲になった人物の1人。たこ焼き好き。たこ焼き食べながら死ぬ予定のレベルでたこ焼き好き。

 

この本を神長智樹のせいでたこ焼きを食べた時に涙が出る事になりかねない。

 

物語の中で登場回数は少ないけれど、智樹が居なければ主人公が生きて居なかった可能性もあるので、物語を作り上げた人物の1人でもある。けど、生きて居て欲しかった。そして、智樹と主人公と鈴子3人でいろいろやれたら良かったのにね。

 

感想

サクサク読めたので読み心地は良かった。特に後半の11章から殺人事件という事が発覚してからは一気に読んでしまった。たぶん物語に引き込まれていたんだと思う。

 

私自身「主人公が小学生」という事を読んでいる最中に見破れなかったのが悔しくて2度読みを真面目に行っていませんが「主人公=小学生」という事を頭に入れて読み直したら絶対に別の観点でも読める作品だと思う。

 

「中学生で幻視が見えなくなった事」だったり「幻視で死ぬ予定だった人の死を回避させた人はどうなるのか」だったり等様々な気になる点は個人的に残る物の、全体としては「うん、連続殺人事件はやっぱり夢に出て来そうで怖い」という感想に尽きる。

 

エピローグを読んで

この大学生になった主人公と鈴は付き合ってるのか?なかなかよく分からない。だとしたら何歳差なんだろうと思ってしまった。たぶん10歳無いぐらいの差だと思うけど。

 

幻視の見えなくなった主人公と幻視ではなくなった鈴子で「幻視繋がり」は無くなってしまってもずっと連絡は取り合い、主人公が大学生になった今も頻繁に会っているという事はやっぱり付き合っているのだろうか。普通の友達同士っていう考えも出来そうだけど。

 

まぁ、2人が幸せそうならよし。

 

「死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録」オススメな人

・心臓がそこそこに強い人

「連続殺人事件」だったり「大量殺人事件」だったり「自殺」だったりと様々な死が起きたり起きなかったりする小説です。この単語が苦手な人にはオススメできませんが「怖いお話大好き」という人には良いのかもしれません。けど、「怖いお話大好き」という人にはあまり怖さが強くないかもしれません。

 

ミステリー小説でありホラー小説ではありません、悪しからず

 

・純粋な良い人に出会いたい人

鈴子さんに会うだけという目的でこの本を読むのも良いんじゃないかなと。個人的には「フルーツバスケット」という漫画の本田透が浮かびました。本田透をちょっと騒がしくさせたら鈴子さんになると思ってる。

 

少なからず私は鈴子に出会えて良かったと思ってる。好きだ、例えショートヘアーでも。

 


 

 

二宮敦人「最後の医者は桜を見上げて君を想う」感想

二宮敦人先生の「最後の医者は桜を見上げて君を想う」を読みました

ネタバレ云々を書く前にまず1言を書かせてください。

 

久しぶりに本を読んで泣きました。

 

3編で作られている作品ですが、3編とも読んでいる最中に静かに泣きました。そして、読了後も泣きました。ワンワン泣くんじゃなくて、ほんのりと泣けました。

 

思い出しても泣けるレベルでこのブログを書いている最中にも泣ける。 比較的によくあるお話なのかもしれないので、読む人によっては「こなんよくあるから泣けんわ」という人もいるかもしれません。しかし私は泣けました。

 

以上、涙腺がバグった人の前書きでした。以下からはネタバレが広がっているので、「ネタバレが嫌だわぁ」という人はどうか読む事をご遠慮いただくようにお願いします。

 

 

書き終えてからほとんどがネタバレになってるなぁ、と思いました。2回目ですが、ネタバレ嫌な方はご遠慮ください。

 

あらすじ

舞台は武蔵七十字病院。この病院には熱心に患者を救おうとする副院長の福原と末期患者 からの面談を引き受け延命治療よりも患者本人がやりたいことを尊重する桐子が勤めている。

 

桐子と福原は大学が一緒で大学生時代は仲の良い間柄だったがいつしか考え方が全く違うようになった。副院長という立場である福原にとって「病院の印象を保つ」という点で桐子は邪魔な存在であった。なので、桐子をこの病院から追い出そうとする。

 

第一章 とある会社員の死

私自身病気について無知なので白血病がこのような病気だということに衝撃を受けました。多くの人がなりうる病気の一つの白血病。確実にとは言い切れませんがほとんど治ると言われている病気の一つ、という印象があるのが白血病です。あくまでこれは私の考えている白血病ですが。

 

しかし章名にあるようにこの登場人物の会社員雄吾は白血病になり亡くなりました。読みながら「死ぬんじゃない雄吾!お前には未来があるじゃないか!」と私は心の中で思いながら読んでいましたが亡くなりました。

 

雄吾には奥さんがおり子供がそろそろ生まれるという時期で仕事も順調で幸せな生活を入手出来かけて居た矢先に亡くなったのです。

 

よくあるお話の1つなのかもしれませんが、それでも作者の表現がとても綺麗なので十分に泣けます。

 

雄吾は治療法の選択しを与えられますが、それは全て確実に完治するというわけではなく何パーセントかの確率で成功し、何パーセントの確率で失敗すると伝えられます。

 

実際に「何パーセントの確率で失敗しますが、この際は直ぐにこちらの治療に切り替えて治療するので大丈夫です。そして、この治療も何パーセントの確率で失敗しますが…」と医者に言われた場合を想像してしまいました。「あぁ、失敗する確率はどこにでもあるじゃん。」と思う事でしょう。

 

医療に100%は無いんだなぁと。当たり前なのかもしれませんが、改めて思い知らされます。仮に自分が同じ立場になった時に少しでも助かる確率が高い方へ行くかもしれません。けれど、失敗はつきもので失敗した際に私も「あぁ、ここで死ぬぐらいだったら少しでも寿命が長い方へ行き、楽しい事をすればよかった」と考える事も事実でしょう。

 

そう考えると人ってのはいつか死ぬので今真面目に生きている事がちょっとだけバカバカしく感じてしまいます。 けれど同時に死ぬ前に少しでも後悔を残さないように真面目に生きることそして、時には真面目に生きないことが大事だと思いました。

 

 

第2章 とある大学生の子

とある大学生とは3浪しようやく医学部の大学に入れた女の子のまりえです。 第1章と同じようにこれから幸せな未来がある 女の子。まりえはある日、足がうまく動かない状態になり武蔵野七十字病院へ行きます

 

診断結果は ALS。筋肉が次第に動かなくなっていき最終的には呼吸もできなくなり死に至る病。そして、この病気は現代でも直す方法が解明されておらず医学部に入学するほど熱心に勉強していたまりえもこの病気について知っていた。もちろん「これから医者になる為に勉強するんだ!」と思っていたまりえは大変なショックを受けた。余命は半年と宣告される。

 

まりえを診断したのはまりえの進学した大学と同じ出身の音山先生。「同じ出身大学」という理由でまりえを気にかけ、まりえが退院後も自宅診療を行った。

 

もうね。第1章でも泣けたのに、更に重いの来ちゃったのかよ。と思いましたよ、私は。ALSは人工呼吸器をつけて延命治療をして少しでも生きる事を伸ばす事が出来ます。副院長の福原は「延命している間に治療法が見つかる可能性がある」という事で延命治療すべきと言います。

 

しかし、まりえを診断していた音山は「無理やりにでもまりえを延命治療すべきかどうか」を桐子に相談したり自分でも考えたりしました。

 

そして、まりえは延命治療をしない選択を自らしました。音山はまりえの選択を尊重しました。

 

3浪しているからと言ってまりえはまだ20代ですよ。 

両親も医者でお金には不自由がなく、両親の意見はもちろん延命治療をして出来る限り命をつないでほしいという事でした。その中でまりえは延命治療を選択しませんでした。確かに延命治療は本人も見ている周りの人にもつらい思いをさせるかもしれません。それでも普通の20代ってのは生きて居たい年齢だと思います。

 

そして、そのまりえの意思を尊重した音山先生もどこかで「延命治療して欲しい」と思う所もあったでしょう。それを言葉に出さなかった音山先生がかっこよい。

 

作品中にも有りましたが、この姿は医者でしょう。ALSを患って大学へはほとんど通えなくても医者の姿をしていました。1番泣ける章がこの2章だと思います。そして、第3章を引き立たせるのがこの2章でもあります。

 

第3章とある医者の死

とある医者は第2章でまりえを診察した音山先生です。「福原が桐子を追い出したい」という所から「あぁ、ここで桐子が亡くなり、福原が「ごめん、お前の事誤解していたようだ」みたいな上手い感じのハッピーエンドになるのね」と勝手に予測しましたが、亡くなるのは音山です。

 

第3章の冒頭で桐子が風邪引いて音山から診察受けるシーンが有るからそういう風に思った人は私だけではないはず。

 

桐子を診断中に音山が血を吐き、すぐに福原が音山を診察し音山が癌であることを発見する。その癌の手術は喉の声帯を取る手術で、声が上手く出せなくなる手術だった。音山はおばあさんに電話をし、おばあさんが喜ぶ事が好きで、「声が出なくなる」というのは選びたくない選択だった。

 

福原は「何としても命をつなぎ留めたい」という考えで、桐子も「体力がある内に手術をし生きるべき」という考えだった。音山はやっとの思いで決意し手術をする事にしたが、既に転移しており手術が出来ない状態になっていた事が、手術直前に判明する。

 

福原は放射線の治療等で癌を小さくする方針を立てたが、音山はそれでもなお「おばあさんと電話をするために声が出せる状態」を望んだ。そして、桐子は音山の意見を尊重した。もちろん、その事に対し福原は桐子に激怒する。

 

正直、人の命なんだから患者自身の選択をもう少し尊重してくれよ、福原。と思いましたが、医者という立場ってのは患者を早死にさせる立場ではなく、患者を治療する立場。その点を考えれば福原の考えは間違ってはいないと思った。

 

もちろん、桐子も患者と患者の家族の前で余命をスパっと宣告するのも「何だかなぁ」と思いますが、「これからの時間がこれだけ有ります。なので、大事に使っていきましょう、後悔しないように」という考え方だと間違っていないのかもしれない。

 

「最後の医者は桜を見上げて君を想う」オススメな人

正直、「こんな人にオススメ」と書く事が難しい本でした。もちろん、「全員にオススメ」と書く事も出来ない。少なからず実際の医療現場で働いている方は「こんなに世の中上手くいかないぜ」と思われると思う。

 

「生き方に迷っている方にオススメしたい」とも最初は考えましたが、私自身「生き方迷った事」が無いですし、確かに本の内容は重い内容でしたがそこまででもない。かと書いて「この本軽い内容だよ」とも書けない。

 

病院が舞台の本を読んだ事がほとんど無く「医療系の小説を読んでみたい!」と思った方にはオススメしたい本の1つではあります。

 

長谷川夕「僕は君を殺せない」感想

長谷川夕先生の「僕は君を殺せない」を読みました。いつもの様に至る所にネタバレが有るので「ネタバレ嫌だわ」という方はどうか他のネタバレが無いです宣言をしているレビュー記事をお読みください。

題名からして「あぁ、殺せなかったのね、人殺しはよくないからね、無事いろいろと終わるお話だね」という雰囲気はします。そして、視力が悪い私にとって表紙絵は「あぁ、ぼんやりしてる絵だなぁ」と思いました。何の絵か理解出来て居ませんでした。

 

この表紙絵がそこそこに物語を物語っております。

 

掲載されている作品は1編ではなく、以下の3編が掲載されています。

・僕は君を殺せない

・Aさん

・春の遺書

表紙絵は「僕は君を殺せない」の1つのシーンの絵です。

 

読んだ限りでは全く別々のお話です。もしかして舞台が一緒だったりするのかもしれませんが、私には分かりませんでした。

 

 

 

ざっくりとした感想

正直、私には難しかったです。「私には」という事であって恐らく高校生が使用している教科書ぐらいの内容を真面目に解釈しようとする人なら楽々読めると思います。もちろん、「真面目に解釈する姿勢」が必要であるだけで「真面目に解釈が出来る」事が必要だとは思いせんが。

 

普段ガッツリ文章を読む事をしないので、ちょっとでも読み飛ばすと「あれ?ここどこ?」みたいになります。そして、「僕は君を殺せない」は登場人物が多い。そして、登場人物がとこの家系の人なのかも有る程度理解しながら読まなければなりません。

 

僕は君を殺せないだけでなく、Aさん、春の遺書もそこそこ人物関係がややこしい。

それが1つの面白さでもあるのですが。

 

私は帯が付いていない状態で購入しましたが帯には「衝撃なラストが!」的な事が記載されているそうです。私には「うん、衝撃なラストが!」以外にも帯に記載する事沢山あったんじゃないかなと思いました。

 

確かに3作品とも衝撃的なラストだったと思います。読書通の人にとっては「よくあるラストで衝撃的じゃないわ」と思うかもしれませんが、幸い私は読書通ではないので気にしません。

 

僕は君を殺せない

短編や中編の基準が分かりませんが、この本の約半分を占めて居るので、中編って事でも良いんじゃないかなと。

 

主に2人の登場人物の視点によって語られる話ですが、それを私が飲みこむのが遅かった。半分ぐらい読んで「何でこの主人公はシーンが変わるごとに口調もガラリと変わるんだろう」と思いました。で、よくよく考えたら「全然生活環境違う2人居るじゃん」となり、「あ、別々の人ね、そうだよね。」とたどり着きました。

 

圧倒的に不足している私の読解力を自覚する事が出来るお話でもありました。

 

読了後「良かったね、レイちゃん」と思いました。

読み手によっては「何でレイちゃんは誠の記憶をほとんど覚えて無いんだよ!」と思う人も居るかもしれませんが、私は「覚えてなくて良かったね」と思います。

 

正直泣ける本ではないとは思いますが、レイが冷凍庫の中で殺されると分かりながらも誠に対し「待ってる」というシーンは泣けました。

 

仮に誠が生きて居たら2人で幸せに生きる選択肢もあったのかもしれませんが、誠がその生活を続けられるかどうかは分かりません。ある意味、誠も死ぬ事が出来て良かったんじゃないかなと。良くはないのですが。

 

一馬がいなければ2人は幸せに終わったんだよチクショウとももちろん思いましたが。

 

Aさん

上記で記載しましたが「私の読解力は低い」です。結果として、この本の3作品の中で1番この「Aさん」が理解出来ませんでした。最初から最後までと大袈裟には書きませんが、とりわけ最後は理解出来なかった。

 

2度読みどころか10度読みぐらいは浅く広く読んだつもりですが、分からない。主人公が誰かを殺したのは分かります。そして、浴槽でその死体を解体したのも分かる。

 

「え…?だから…?何…?」

 

最初はAさんの死体なのか。とも思いましたが、違う様子。Aさん以外の死体ならば「そうなんだ」で良いのですが、最初「Aさんの死体じゃね?」という誤解を持ちながら深読みし読んでいたので余計私の頭はぐちゃぐちゃになりました。

 

そして、現在も「何だかなぁ」という感じの読了に落ち着きます。

 

春の遺書

いろいろと考えると3作品の中で1番簡単に読める作品だったと思います。そして、1番終わり方が綺麗だったなと。

 

私みたいに読解力が低い人はそんなに多くないと思いますが仮にいるのならば、春の遺書から読みましょう。そして、Aさんは読まずに、「僕は君を殺せない」を物凄くゆっくり読みましょう。

 

実際に幽霊となって「返してくれぇ」と人が現れる事は無いと思いますが、似たような事は有るんじゃないかなと。婚姻届けを飲みこんで自殺するって事もなかなか無いとは思いますけど。

 

長谷川夕「僕は君を殺せない」オススメな人

1冊に3作品入っていますが「僕は君を殺せない」に対してだけオススメな人を記載します。

 

・ミステリーとホラー小説が好きな人

ジャンルとしてはミステリーらしいですが、私が最初読んだ時は「これはミステリーではない。ホラー小説だ」と思いました。しかし、それでもジャンルはミステリーなので、私の独断で「これはホラー小説」とは書ききれません。なので、ミステリーも読みたい、ホラーも読みたいという人にオススメしたい。

 

・物凄く壮大に驚きたくない人

「衝撃なラスト!」と言える程の衝撃は有りません。衝撃レベルの上限が仮に5だとするのならば、この本の衝撃レベルは2.8ぐらいじゃないかなと。要は「ちょっと驚き」ぐらいなラストです。

 

なので、「衝撃過ぎて夜も寝れないわ!」という状態になる事は無いと思います。夜小説を読む方で「強烈なラストだと寝れないんだよなぁ」という方にはオススメです。

 

石田空「神様のごちそう」

石田空先生の「神様のごちそう」を読みました。

手に取った理由としては「マイナビ出版ファン文庫?何それ?聞いた事の無い出版社じゃん!」という題名とか云々の前に初めての出版社の本を読んでみようという事で手に取りました。

 

いつものように至る所にネタバレがあるので、「ネタバレ嫌だわ」だったり「どうしてネタバレすんのよ!」と言う方はお読みいただかない様にご協力をお願いします。

 

 

あらすじ

ヒロインはある田舎の食堂の娘梨花。料理の専門学校で調理師の免許を取り、実家の食堂を継ごうと考えていた。

 

専門学校で春から使用する教材と割烹着を取りに行き、自宅へ帰宅する時、ある神社から音が聞こえた。その神社は「近づくと呪われる」と言われている神社だったが、音が気になり音の方向へ梨花は行く。

 

そこには、倒れて居る男性が居て、その音は男性が空腹でお腹が鳴っている音だった。梨花は持っていたきんぴらのケーキを渡し、その場を去ろうとするがその男は梨花を神域へ連れて行った。

 

神域には梨花をさらった男性と同様に空腹な御先様という神様が居て、梨花は御先様に料理を作る料理人になる。

 

表紙絵

私は普段文庫本を1冊から2冊は持ち歩いています。持ち歩くとなると、本の痛みが生じやすいので、布製のカバーをかけて居るのですが、結果として、読んでいる最中に表紙絵をほとんど見ません。

 

しかし、この本は表紙絵に「このキャラクターはこんなんね」というのが分かるのです。大事です。

 

私にとってころんが一体どういう生き物なのかが全然分からず「アレ?」と思いながら読んでいましたが、カバーを取り表紙を見てみると「ころんめっちゃ可愛いキャラクターじゃん!」という謎の驚きをしました。ころんに手と足があるイメージは無かったよ。

 

くーちゃんと花火はだいたい想像通りでしたが、文章だけだところんはなかなか分かりずからったです。もしくは私の想像力が不足している可能性があります。

 

感想

物語がトントン進むので現実世界で社畜の様に生きて居る私は「こんなとんとん拍子で世の中は上手くいかないよ」と思ってしまいました。が、これはファンタジーです。ファンタジーに現実世界の話は不要です。現実云々言わずにファンタジーに浸かるべきなのです。

 

読んでいて確実に「お腹が空いた」となります。

 

そして、主人公の口調が好き嫌いが分れるかもしれません。まず、ヒロインの一人称が「あたし」です。個人的に「あたし」が一人称になると文章が読みにくい。読み進めて行く内に慣れていきましたが何度かつっかえました。他にも何点か「読みにくいなぁ」と思う所が有りましたが、こういう本という認識で読み進めました。

 

終わり方は「うん、そうなるよね、予想通り」というオチでした。誰もが予想出来る範囲のお話です。誰もが予想出来る範囲のオチですが、それが1番幸せな終わり方なので良いのです。「御先様が現代で人間になる」というオチでなくて私は安心しているぐらいなのです。「邪神になるぐらいなら、俺は人間になる…!」とか言いだしそうじゃないですか、御先様なら。

 

それはそれで急展開過ぎて面白いのかもしれませんが。

 

続編があるみたいなので、気になる所です。もしかしたら本当に御先様は人間になっているのかもしれません。手に入れる機会が有るのなら入手して読みたい。

 

料理について

本の題名に「ごちそう」と有るので、多くの料理が出てきます。その料理は高級料理のフレンチやイタリアではありません。日本人なら慣れ親しんでいる和食です。

 

日本語で書かれている本なので、読み手はほとんど日本人だと思いますが、多くの日本人にとって和食はズドーンと空腹にぶち当たります。

 

この本に登場する料理が仮に上記で挙げた洋食だとすれば和食と比較すると強い空腹にはならないでしょう。「チーズたっぷりのピザ」や「オリーブオイルを使用したパスタ」なんてこの本には似合いません。

 

御先様がナイフとフォークを使用して料理を食べる姿を見てみたい所では有りますが。

 

どの料理も素材を大事にしています。現代の化学調味料の無い料理をヒロインは作ります。だから良いんだよ!という事。最初に至っては醤油すらないんだからね。

 

因みに、電子レンジと包丁で出来る料理しかしません。これを料理を言えるのか分かりませんが、十分に食事は摂れているのです。もちろん、神域には電子レンジもオーブンも有りません。かまどだけです。

 

「神様のごちそう」オススメな人

・真面目じゃない人

ファンタジーだったり空想を読んで「こんなのありえない!」と思ってしまう人は最初の数ページで読まなくなると思います。「神域?そんなのないない」と思いページを閉じる事でしょう。

 

空想にどっぷりつかれる方には夢中になれるとは思います。

 

・イケメンでツンデレな神様に会いたい人

個人的に御先様がツボでした。好きです。イケメンかつツンデレな神様です。

途中これは恋愛小説を読まされてるんじゃないか?と思うぐらいでした。分類としては恋愛小説では有りませんのでご了承ください

永田ガラ「信長の茶会」

何となく歴史が絡んでいて軽い本を読みたいなぁという事で手にした本が今回の永田ガラ先生の「信長の茶会」です。

この先はネタバレが転がっていますので、ネタバレ嫌いな方はお進み頂かないようにお願いします。

「信長」と「茶会」という単語があればきっと歴史っぽい物なんじゃないかなと。実際は強い歴史感のある本ではありませんでした。

強い歴史感を求めて読んでいたわけではなく、軽い歴史感を求めていた私にとっては十分でしたが。

「信長が茶会を開きまくる」という雰囲気の題名ですがそんなことはありませんでした。寧ろ信長でない人が茶会を開きまくるお話でした。開きまくるという表現が正しいのかは分かりませんが。

 

「茶会」という言葉をいくつか出しましたが、私にとってこの本の心に残るシーンは茶会ではありませんでした。なべと元秀の小規模な茶会は印象に残りました。

 

茶会の礼儀、歴史をあまり知らなくても読む事は楽々出来ます。しかし、多少本能寺の変辺りの時代の人々について知っておくとより面白く読めるんじゃないかなと。

 

 

 

あらすじ

戦国時代の本能寺の変が起きる夜、2人の男が居た。その2人の男は織田信長本能寺の変の首謀者の明智光秀。2人は死後地獄で和解し今では2人で地獄の生活を楽しむ程に良い仲になっていた。

 

この2人はある日「つくもがみ」という茶器を探し、本能寺の火にくべろという命令を冥府王から言われ地獄から蘇った。

 

しかし、光秀が茶器つくもがみを探している最中に信長はどこかへ消えてしまう。光秀は信長が消えてもなおつくもがみを探していたが、明智軍の兵に怪しまれいたぶられてしまった。

 

そんな光秀を救ったのは狩野元秀。元秀に救われた光秀はある女の子(名前:なべ)の従者として堺へ行き、茶器つくもがみを探し出す。

 

 

おおざっぱな感想

賛否両論が物凄く出る作品だと思います。信長と光秀が地獄で仲良くしていて本能寺の変の日に蘇るという点は確かに「何だかなぁ」と感じるかもしれません。けれど、これは永田ガラ先生の設定です。設定に抗う事は読者には出来ません。私以外の人の読者は抗う事が出来るかもしれませんが、少なからず私は抗わずに大人しくそのまま読み続けるのです。

 

織田信長明智光秀も読了後には眼中にはほとんどありません。確かにこの先の2人の行く先は気になります。きっと地獄の生活とほとんど変わらず楽しく現代を満喫して行くのだろうなぁと。そして、2度目の死を迎えるのでしょう、きっと。

 

「茶会」と「信長」を特段求めていなかったので全体としての終わり方は好きな終わり方でした。すべての登場人物が出てその先がだいたいは想像出来るという終わり方です。

 

1つ分からなかった事がどうして冥府王はつくもがみを探して燃やせと命じたのか。それが分からなかったのが残念だったなぁとしか。

 

蘇った後に「極楽浄土へ行くか現代へ残るか?」と聞かれたら

信長と光秀はこの質問に対し「現代で生きる」選択を取りました。その後に茶器にさらわれて茶会へ行き行方不明になりましたが。

 

正直意外だったなぁと。信長は新しい物好きのイメージで、実際に新しい物好きなのでしょうけど、恐らく極楽浄土へは行った事は無かったでしょう。なので「行った事の無い極楽浄土へ行ってみたい!」と言いだしそうな感じがしました。

 

因みに私も極楽浄土へ行きたい側の人間です。蘇らなくても今現在「極楽浄土へ行けますよ、確実に」と言われたら行く選択肢を取るでしょう。

 

実際に言われたら確実に怪しい宗教の勧誘の可能性が大ですが。

 

登場人物について

実際の織田信長明智光秀がどんな人なのかは分かりません。少なからず本と同じ内容として確実に書ける事としては、実際の光秀も本の光秀も髪の毛が無く禿ていたという事。

 

「信長の茶会」と書きつつも信長はそんなに出て来ません。また、明智光秀でも出てきますが「光秀」という名前ではなく「十兵衛」という名前で中間活躍するわけであまり光秀感を感じません。

 

何にせよ、信長も光秀も良いキャラクターだったなと。

 

何よりもなべが信長に「今後の私の人生を何とかしてくれよ!」といった時の信長の発言はかっこ良かった。もちろん、元秀がなべに対し「信長にこの先の人生をお願いしてみてはどうだ。」と言った元秀もかっこ良かった。

 

元秀に関しては最初は「何だこいつ、兄との実力の差に萎えて落ち込んでる残念な人間じゃん。もっと自分に自信を持てよ、私のような絵の能力皆無な人間も居るんだよ。萎える暇あるなら私に絵の才能分けてくれよ。堺に居るのは自由だけどせめて絵を描きまくって金稼いて生きて行けよ。出来たらなべと共に。」と思い多少イライラしました、ごめんなさい。

 

上記でも書きましたが最後はなべと共に京都に行って生活するんじゃないのかなー。と思いましたが、そのような結末は無く。ちょっと期待外れでした。

 

読了後

結構時間をかけてゆっくり読んでいたので前半の内容をほとんど忘れました。たぶん読み始めてから約2週間ぐらいかけて読んだんじゃないかなと。この2週間の数日間ぐらいは本に触れてなかった時もあったぐらいです。

 

最後のなべと元秀の会い方に何となく違和感を感じたので最初の方に戻ってみて読み返してみるとやっぱり繋がっていました。同時に、元秀もっと早くなべって分かってやってくれよ…!とも思いました。

 

今井さんが元秀の前にやって来て「あぁ、やっぱりなべだったんだ!」となる元秀、遅いよ!朝遭遇した時点でなべを追いかけてくれよ。

 

「信長の茶会」をオススメな人

・軽くてちょこっと歴史物を読みたい人。

厳密に書くとおそらくこの本は歴史物ではありません。しかし、歴史上の人物が登場する小説としては楽しめる作品だと思います。そして、何より軽い。歴史小説の難しい感じは一切しない。予備知識無しでも楽々読めます。

 

・ちょこっと心温まりたい人

信長と光秀の所をカットしなべと元秀のお話にしてしまえば心が温まるお話だと思います。完全に心温まりたい人はオススメできません。