仲町六絵「おとなりの清明さん~陰陽師は左京区にいる~」感想

仲町六絵先生の「おとなりの清明さん~陰陽師左京区にいる~」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をご遠慮くださいませ。

奥のセーラー服を着た女の子がヒロインの桃花。桃花が抱えて居るネコの名前はミオ。

手前のイケメンが主人公の堀川清明という名前で現代社会に居る安倍晴明

 

話はちょっと飛ぶんですけど2019年の春アニメで「真夜中のオカルト公務員」というアニメが放送されていました。オカルト公務員も安倍晴明の話がちょっと出てて「これは!」と思い購入しました。

 

真夜中のオカルト公務員での主人公と清明の接点は先祖という設定でしたが、「おとなりの清明さん」では先祖や前世とかではなく本物の安倍清明

 

歴女と名乗る程歴史が好きなわけではないのですが、最近は歴史物のライトノベルがあれば手にしたくなる衝動に駆られています。気軽に歴史について多少知れるのがライトノベルの良い所だと思います。全てが史実通りではないという点を除けば歴史を齧る分には丁度良いんじゃないかなと。

 

しかも、表紙絵のようなイケメンな清明さんなら尚更。

 

若干古いお話でかつイラストも若干古い思考なので灰汁のあるイラストですがそんな事お構いなしに私の頭の中では清明さんが美化されていました。

 

最初にこの本がオススメな人を紹介させていただきますが、イケメン世話好き年上男性が好きな人はこの本を読みましょう。千年単位で生きてるのでだいぶ年上ですが。多少生活力無い所だったり人間感が無い所もありますが、それが尚良い。

 

完璧な人より多少完璧じゃない人の方が好きになれるのは私だけじゃないはず。

 

 

あらすじ

ヒロインの桃花が引っ越し先の京都の家のお隣さんは「堀川清明」という名前の男性が1人で住んでいた。大学の先生という事で世間では知られている堀川清明だが、実際は大学の先生ではなく平安時代陰陽師安倍晴明」だった。

 

桃花は堀川清明から安倍晴明である事を伝えられる物の、安倍晴明平安時代陰陽師で生きて居るはずがないので最初は信じなかったが、飼い猫のミオが脱走した際に清明がミオを助けてくれたことにより信じる事になる。

 

登場人物

ヒロイン:糸野桃花

滋賀県に住んでいたが親の仕事の都合で京都へ引っ越す事になった高校1年生。友達と別れる事になるも滋賀県と京都の距離なら電車で直ぐだから平気と思えるぐらいに元気な子。

 

何事に対しても努力家で清明からの何題を投げだす事無く必死に考える子。同時に不満も直ぐに口に出す高校生らしさもある子。

 

ミオという名前の三毛猫を飼育している。

幼少期からリボンが好きで、リボンを入れるためだけのケースが有るほどに好き。髪留めもリボン。桃花自信どうしてこんなにリボンが好きなのか分からない。

 

母の葉子は歴史上の安倍晴明の大ファンでお隣に住む人物の名前が晴明という事を知り大興奮する程にファン。

 

主人公:堀川清明安倍晴明

ヒロインの自宅の隣に住んでいる年齢20歳ぐらいの男性。大学の先生という事に世間ではなっているが、実際は安倍晴明という平安時代陰陽師

 

ちなみに物語の舞台は平安時代ではなく、現代社会。なので平安時代のような服装ではなく常にスーツを着用している。

 

人間では飲めない量のお酒を飲んだり、井戸を使用し移動したり等の行動からも普通の人間のような動きをしない場面が時々見られる。

 

ざっくりとした感想

京都を舞台にした物語です。安倍晴明関連で「真夜中のオカルト公務員」も上記で紹介しましたが、似ている作品としては「京都寺町三条のホームズ」かなぁと。ホームズさんの方が紳士的な人間ですし、ダメな所が少ないとは思いますが。ヒロインの性格はほとんど一緒の印象でした。

こちらもアニメ化された作品なので、おとなりの清明さんを読んでいる最中にはホームズのアニメ声優で脳内再生されていました。

 

いろんなアニメといろんなラノベを読んでいくと「あ、このアニメに似ている」ってなってラノベを読んでいる最中に脳内で音声が再生されていく経験をしているのはきっと私だけではないだろう。

 

第1話「清明さん、猫を助ける」

清明さんと糸野一家が出会うお話です。お隣の清明さんに引っ越しの挨拶をしに行き出会います。その際中に桃花が飼育していたミオという名前の三毛猫が脱走しちゃうんですよね、家から。

 

しかも「猫を虐待する人が付近にいる」という悪い噂も流れてたんです。そうなるとミオも虐待されちゃうって思うわけで桃花は焦ります。

 

表紙の見た目からは想像出来ませんが清明さんはまさかの猫好きでした。動物に縁の無さそうな雰囲気が個人的に読み取れましたが、たぶん清明さんは動物全般に好きでしょうきっと。動物好きの男性って素敵だと思う。

 

清明は「猫探しの協力」を申し出ます。そして、清明の家からは男の子が出てきて「ミオー」と呼び続けます。

 

この男の子は清明が操る式神でした。

 

翌日ミオは無事帰宅し、かつ猫を虐待していた犯人も捕まります。

 

清明は自分の家と糸野家に結界を貼り、そこからミオが出れないようにします。仮に清明さんが猫嫌いだったなら糸野家だけに結界を貼れば良いのですが、清明さんの家までに結界を貼るのです。相当に清明さんは猫好きだよ、絶対。

 

第2話「やすらい祭り」

中町六絵さん「からくさ図書館」シリーズで登場するキャラクター出てくる物語です。

時子と小野篁の2人が登場するのですが、清明さんには負けるけど小野篁もかっこよいはず。是非読んでみたい作品。

 

「やすらい祭り」のメインは付喪神のお話です。

 

からくさ図書館を運営している小野篁が晴明の所へやって来て「着物の男女二人組のあやかしを見かけた」と伝える。

実際に「やすらい祭り」という疫神を退治するお祭りが開催された時に、晴明と桃花はそのあやかしを探しに行きました。そのあやかしは付喪神でした。

 

付喪神ってのは道具に宿る神様ですが、この物語では「足袋型」の付喪神です。なかなかマイナーなチョイスをしたよなぁと思いました。そして、夫婦の付喪神

 

足袋型の付喪神はある都合により燃やされる事になっており、燃やされたくないこの二人の付喪神は脱走して来たのです。そこで、丁度庭に置く石が欲しかった晴明さんはその二人の同意を得て庭に置く石とした。

 

晴明さん、優しい。個人的に晴明さんは篁から話を聞いた際に「きっと足袋型の付喪神が逃げ出したんだろう」という事を予想していたんじゃないかなと思ってる。

第3話「優しい鬼」

妖怪の代表のような存在鬼についてのお話です。

 

ある日ヒロインは町で鬼を見かけます。直ぐに清明さんに電話をし鬼を見かけた事を伝えます。そして、晴明さんは使いを送ると伝えて第1話で登場した式神の双葉がツバメの姿で現れます。

 

この地は、長き戦の地。われに力を与えよや。

p.116

 

こんな事を言いながら歩く鬼を桃花は見かけたのです。しかし桃花は「鬼なのに鬼のパンツ穿いてない」という事を考えるぐらいに余裕はありました。何で怖がらないんだ、不思議。

 

で、この物語の「優しい鬼」は鬼瓦でした。そして、桃花が見かけた鬼も鬼瓦。鬼瓦ってのは家を見守ってくれる見た目が怖い瓦です。

 

その鬼瓦は桃花が町で見かけた翌日、晴明の家で再開します。

 

その鬼瓦の相談内容が優しかった。この鬼瓦の顔は普通の鬼瓦より優しい顔立ちの鬼瓦。もし仮に怖い顔の鬼瓦だったら晴明さんのところには訪れなかった事でしょう。

 

顔が優しい故に守れない事があったので晴明さんの所に来たのです。

 

そこで、晴明さんは墨で鬼瓦の顔に書き足し怖い顔にします。その結果鬼瓦が守りたい物は守る事が出来たのです。

 

この物語の良いところは晴明さんだけじゃなくて他の登場人物も優しい所。同様に優しい物語は「カフェかもめ亭」が浮かびました。

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第4話「おサル戦線異常なし」

サルの名前が大変ややこしい。5話中で1番テンポ悪く読みましたがそれは私の理解力の遅さが理由でしょう、きっと。

 

けど、1番笑えるお話がこの「おサル戦線異常なし」だと個人的には思ってる。

 

登場するのは見た目がサルでも実際は神社を守るサル。以下の四匹の守りサルが登場しますり

 

・飛丸

一番最初に登場したサルです。日吉大社の使いの猿。晴明を平安京サル会議に招待しに来た。

 

・赤山禅右衛門

ダジャレが好きなサル。最近自然界の雌サルに惚れられて困ってるようで実は結構喜んでる可愛らしいサル。

 

出雲路猿田彦

黄色と黒の横縞に日の丸が付いた烏帽子を着用しているサル。この黄色と黒の横縞が「鬼のパンツのようだ」と言われた事がコンプレックスになってる。

 

・猿ヶ辻清麻呂

今回の会議で珍しい桃色の四匹の猿を見かけた事を報告する。

 

最後の清麻呂の見かけた事を「桃色の四匹の猿」について物語が展開します。

 

漢字が多い猿達なんだよね、これが読む上で突っかかって大変だったという事。まぁ、数ページで終わるのでそこだけ神経削られました。

 

第5話「舞妓の神様」

この本の5作品の中で1番優しい物語でした。うつくし御前という神様のお話です。

 

茜という晴明の知り合いのかんざし屋の女性から「物凄い少食の舞妓のまかないさんが居る」という話を聞きます。現代でも少食で生きていける人は居ますが、そのまかないさんは1日に手のひらに乗るぐらいしか食べれないそうで。

 

まかないさんが行く八百屋に晴明さんと桃花が張り込んで、見つけます。そこで、晴明さんが「少食のまかないがうつくし御前」という事を知ります。

 

うつくし御前は綺麗になりたい女性を手助けする優しい神様で、舞妓のまかないをやっている理由も新しく舞妓見習いとして入ってきた子を思っての事でした。

 

しかし、うつくし御前もこのまま少食のままだと古来の言い伝えを信じる上の人に「妖怪じゃないのか」という疑いを持たれて、折角就いたまかないを辞めなければならないかもしれなかった。

 

もちろんこれも晴明さんの陰陽師の術で治ります。無事少食でなくなったうつくし御前は普通の量を食べれるようになるのです。

 

そういう術が陰陽師にあるなら他にももっと面白い術があるんじゃないかなと期待してしまう。

 

きっと桃花も一緒の考えだろう。ただでさえイケメンな顔立ちなのに行動もイケメンなんだぜ、晴明さん。どんな術でも身の危険が多少あってもずっと見ていたい。

 

「おとなりの清明さん~陰陽師左京区にいる~」をオススメな人

・イケメン陰陽師に会いたい人

陰陽師の部分はカットしても良いかなって思ってるのですが、一応。最終的に桃花は晴明に恋心を抱いている雰囲気で終わったので、今後の展開によってはより晴明さんが甘くなると私は信じている。

 

甘い雰囲気の晴明さんを見たいので上手く桃花よ、働いてくれ。

 

・古風な物語に興味がある人

完璧な古風を求めている人はあまりにも蛇足な部分が多すぎてオススメは出来ませんが、何か和風なお話を読みたい人にはオススメしたい。私のような中途半端な歴史オタクは十分に楽しかった。

 

この作品は1冊完結のお話ではなくて続編がいくつか発売されています。桃花がリボンが好きな理由が今回では解明されていないので今後の作品に期待。