永田ガラ「信長の茶会」

何となく歴史が絡んでいて軽い本を読みたいなぁという事で手にした本が今回の永田ガラ先生の「信長の茶会」です。

この先はネタバレが転がっていますので、ネタバレ嫌いな方はお進み頂かないようにお願いします。

「信長」と「茶会」という単語があればきっと歴史っぽい物なんじゃないかなと。実際は強い歴史感のある本ではありませんでした。

強い歴史感を求めて読んでいたわけではなく、軽い歴史感を求めていた私にとっては十分でしたが。

「信長が茶会を開きまくる」という雰囲気の題名ですがそんなことはありませんでした。寧ろ信長でない人が茶会を開きまくるお話でした。開きまくるという表現が正しいのかは分かりませんが。

 

「茶会」という言葉をいくつか出しましたが、私にとってこの本の心に残るシーンは茶会ではありませんでした。なべと元秀の小規模な茶会は印象に残りました。

 

茶会の礼儀、歴史をあまり知らなくても読む事は楽々出来ます。しかし、多少本能寺の変辺りの時代の人々について知っておくとより面白く読めるんじゃないかなと。

 

 

 

あらすじ

戦国時代の本能寺の変が起きる夜、2人の男が居た。その2人の男は織田信長本能寺の変の首謀者の明智光秀。2人は死後地獄で和解し今では2人で地獄の生活を楽しむ程に良い仲になっていた。

 

この2人はある日「つくもがみ」という茶器を探し、本能寺の火にくべろという命令を冥府王から言われ地獄から蘇った。

 

しかし、光秀が茶器つくもがみを探している最中に信長はどこかへ消えてしまう。光秀は信長が消えてもなおつくもがみを探していたが、明智軍の兵に怪しまれいたぶられてしまった。

 

そんな光秀を救ったのは狩野元秀。元秀に救われた光秀はある女の子(名前:なべ)の従者として堺へ行き、茶器つくもがみを探し出す。

 

 

おおざっぱな感想

賛否両論が物凄く出る作品だと思います。信長と光秀が地獄で仲良くしていて本能寺の変の日に蘇るという点は確かに「何だかなぁ」と感じるかもしれません。けれど、これは永田ガラ先生の設定です。設定に抗う事は読者には出来ません。私以外の人の読者は抗う事が出来るかもしれませんが、少なからず私は抗わずに大人しくそのまま読み続けるのです。

 

織田信長明智光秀も読了後には眼中にはほとんどありません。確かにこの先の2人の行く先は気になります。きっと地獄の生活とほとんど変わらず楽しく現代を満喫して行くのだろうなぁと。そして、2度目の死を迎えるのでしょう、きっと。

 

「茶会」と「信長」を特段求めていなかったので全体としての終わり方は好きな終わり方でした。すべての登場人物が出てその先がだいたいは想像出来るという終わり方です。

 

1つ分からなかった事がどうして冥府王はつくもがみを探して燃やせと命じたのか。それが分からなかったのが残念だったなぁとしか。

 

蘇った後に「極楽浄土へ行くか現代へ残るか?」と聞かれたら

信長と光秀はこの質問に対し「現代で生きる」選択を取りました。その後に茶器にさらわれて茶会へ行き行方不明になりましたが。

 

正直意外だったなぁと。信長は新しい物好きのイメージで、実際に新しい物好きなのでしょうけど、恐らく極楽浄土へは行った事は無かったでしょう。なので「行った事の無い極楽浄土へ行ってみたい!」と言いだしそうな感じがしました。

 

因みに私も極楽浄土へ行きたい側の人間です。蘇らなくても今現在「極楽浄土へ行けますよ、確実に」と言われたら行く選択肢を取るでしょう。

 

実際に言われたら確実に怪しい宗教の勧誘の可能性が大ですが。

 

登場人物について

実際の織田信長明智光秀がどんな人なのかは分かりません。少なからず本と同じ内容として確実に書ける事としては、実際の光秀も本の光秀も髪の毛が無く禿ていたという事。

 

「信長の茶会」と書きつつも信長はそんなに出て来ません。また、明智光秀でも出てきますが「光秀」という名前ではなく「十兵衛」という名前で中間活躍するわけであまり光秀感を感じません。

 

何にせよ、信長も光秀も良いキャラクターだったなと。

 

何よりもなべが信長に「今後の私の人生を何とかしてくれよ!」といった時の信長の発言はかっこ良かった。もちろん、元秀がなべに対し「信長にこの先の人生をお願いしてみてはどうだ。」と言った元秀もかっこ良かった。

 

元秀に関しては最初は「何だこいつ、兄との実力の差に萎えて落ち込んでる残念な人間じゃん。もっと自分に自信を持てよ、私のような絵の能力皆無な人間も居るんだよ。萎える暇あるなら私に絵の才能分けてくれよ。堺に居るのは自由だけどせめて絵を描きまくって金稼いて生きて行けよ。出来たらなべと共に。」と思い多少イライラしました、ごめんなさい。

 

上記でも書きましたが最後はなべと共に京都に行って生活するんじゃないのかなー。と思いましたが、そのような結末は無く。ちょっと期待外れでした。

 

読了後

結構時間をかけてゆっくり読んでいたので前半の内容をほとんど忘れました。たぶん読み始めてから約2週間ぐらいかけて読んだんじゃないかなと。この2週間の数日間ぐらいは本に触れてなかった時もあったぐらいです。

 

最後のなべと元秀の会い方に何となく違和感を感じたので最初の方に戻ってみて読み返してみるとやっぱり繋がっていました。同時に、元秀もっと早くなべって分かってやってくれよ…!とも思いました。

 

今井さんが元秀の前にやって来て「あぁ、やっぱりなべだったんだ!」となる元秀、遅いよ!朝遭遇した時点でなべを追いかけてくれよ。

 

「信長の茶会」をオススメな人

・軽くてちょこっと歴史物を読みたい人。

厳密に書くとおそらくこの本は歴史物ではありません。しかし、歴史上の人物が登場する小説としては楽しめる作品だと思います。そして、何より軽い。歴史小説の難しい感じは一切しない。予備知識無しでも楽々読めます。

 

・ちょこっと心温まりたい人

信長と光秀の所をカットしなべと元秀のお話にしてしまえば心が温まるお話だと思います。完全に心温まりたい人はオススメできません。