長谷川夕「僕は君を殺せない」感想
長谷川夕先生の「僕は君を殺せない」を読みました。いつもの様に至る所にネタバレが有るので「ネタバレ嫌だわ」という方はどうか他のネタバレが無いです宣言をしているレビュー記事をお読みください。
題名からして「あぁ、殺せなかったのね、人殺しはよくないからね、無事いろいろと終わるお話だね」という雰囲気はします。そして、視力が悪い私にとって表紙絵は「あぁ、ぼんやりしてる絵だなぁ」と思いました。何の絵か理解出来て居ませんでした。
この表紙絵がそこそこに物語を物語っております。
掲載されている作品は1編ではなく、以下の3編が掲載されています。
・僕は君を殺せない
・Aさん
・春の遺書
表紙絵は「僕は君を殺せない」の1つのシーンの絵です。
読んだ限りでは全く別々のお話です。もしかして舞台が一緒だったりするのかもしれませんが、私には分かりませんでした。
ざっくりとした感想
正直、私には難しかったです。「私には」という事であって恐らく高校生が使用している教科書ぐらいの内容を真面目に解釈しようとする人なら楽々読めると思います。もちろん、「真面目に解釈する姿勢」が必要であるだけで「真面目に解釈が出来る」事が必要だとは思いせんが。
普段ガッツリ文章を読む事をしないので、ちょっとでも読み飛ばすと「あれ?ここどこ?」みたいになります。そして、「僕は君を殺せない」は登場人物が多い。そして、登場人物がとこの家系の人なのかも有る程度理解しながら読まなければなりません。
僕は君を殺せないだけでなく、Aさん、春の遺書もそこそこ人物関係がややこしい。
それが1つの面白さでもあるのですが。
私は帯が付いていない状態で購入しましたが帯には「衝撃なラストが!」的な事が記載されているそうです。私には「うん、衝撃なラストが!」以外にも帯に記載する事沢山あったんじゃないかなと思いました。
確かに3作品とも衝撃的なラストだったと思います。読書通の人にとっては「よくあるラストで衝撃的じゃないわ」と思うかもしれませんが、幸い私は読書通ではないので気にしません。
僕は君を殺せない
短編や中編の基準が分かりませんが、この本の約半分を占めて居るので、中編って事でも良いんじゃないかなと。
主に2人の登場人物の視点によって語られる話ですが、それを私が飲みこむのが遅かった。半分ぐらい読んで「何でこの主人公はシーンが変わるごとに口調もガラリと変わるんだろう」と思いました。で、よくよく考えたら「全然生活環境違う2人居るじゃん」となり、「あ、別々の人ね、そうだよね。」とたどり着きました。
圧倒的に不足している私の読解力を自覚する事が出来るお話でもありました。
読了後「良かったね、レイちゃん」と思いました。
読み手によっては「何でレイちゃんは誠の記憶をほとんど覚えて無いんだよ!」と思う人も居るかもしれませんが、私は「覚えてなくて良かったね」と思います。
正直泣ける本ではないとは思いますが、レイが冷凍庫の中で殺されると分かりながらも誠に対し「待ってる」というシーンは泣けました。
仮に誠が生きて居たら2人で幸せに生きる選択肢もあったのかもしれませんが、誠がその生活を続けられるかどうかは分かりません。ある意味、誠も死ぬ事が出来て良かったんじゃないかなと。良くはないのですが。
一馬がいなければ2人は幸せに終わったんだよチクショウとももちろん思いましたが。
Aさん
上記で記載しましたが「私の読解力は低い」です。結果として、この本の3作品の中で1番この「Aさん」が理解出来ませんでした。最初から最後までと大袈裟には書きませんが、とりわけ最後は理解出来なかった。
2度読みどころか10度読みぐらいは浅く広く読んだつもりですが、分からない。主人公が誰かを殺したのは分かります。そして、浴槽でその死体を解体したのも分かる。
「え…?だから…?何…?」
最初はAさんの死体なのか。とも思いましたが、違う様子。Aさん以外の死体ならば「そうなんだ」で良いのですが、最初「Aさんの死体じゃね?」という誤解を持ちながら深読みし読んでいたので余計私の頭はぐちゃぐちゃになりました。
そして、現在も「何だかなぁ」という感じの読了に落ち着きます。
春の遺書
いろいろと考えると3作品の中で1番簡単に読める作品だったと思います。そして、1番終わり方が綺麗だったなと。
私みたいに読解力が低い人はそんなに多くないと思いますが仮にいるのならば、春の遺書から読みましょう。そして、Aさんは読まずに、「僕は君を殺せない」を物凄くゆっくり読みましょう。
実際に幽霊となって「返してくれぇ」と人が現れる事は無いと思いますが、似たような事は有るんじゃないかなと。婚姻届けを飲みこんで自殺するって事もなかなか無いとは思いますけど。
長谷川夕「僕は君を殺せない」オススメな人
1冊に3作品入っていますが「僕は君を殺せない」に対してだけオススメな人を記載します。
・ミステリーとホラー小説が好きな人
ジャンルとしてはミステリーらしいですが、私が最初読んだ時は「これはミステリーではない。ホラー小説だ」と思いました。しかし、それでもジャンルはミステリーなので、私の独断で「これはホラー小説」とは書ききれません。なので、ミステリーも読みたい、ホラーも読みたいという人にオススメしたい。
・物凄く壮大に驚きたくない人
「衝撃なラスト!」と言える程の衝撃は有りません。衝撃レベルの上限が仮に5だとするのならば、この本の衝撃レベルは2.8ぐらいじゃないかなと。要は「ちょっと驚き」ぐらいなラストです。
なので、「衝撃過ぎて夜も寝れないわ!」という状態になる事は無いと思います。夜小説を読む方で「強烈なラストだと寝れないんだよなぁ」という方にはオススメです。