武井ゆひ「届くなら、あの日見た空をもう一度」感想

武井ゆひ先生の「届くなら、あの日見た空をもう一度」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

武井ゆひ先生の作品は2019年8月現在この作品のみ。もちろん初読みの作家さんです。

 

表紙絵が凄く綺麗ってのが第一印象でした。比較的私は表紙買いを頻繁にする人間です。本は中身って良く言いますが表紙も本の一部だから表紙買いする事をどうかお許しいただきたい。

 

表紙の男性が主人公の高校1年生の要、女性がヒロインの元OLの菜乃花です。

 

最初、男性が菜乃花を振った桧山だと思いました。物語の進行的に「あれ、これ物凄く大人びてるけどもしかして要じゃないか」と思い、武井ゆひ先生のあとがきを読んで再び要という事を知りました。

 

全く表紙絵の要が高校1年生に見えないというトラップが敷かれている表紙絵ですが素敵です。2人のイラストも素敵ですが何よりも背景の空の透明感が素敵です。

 

 

あらすじ

ヒロインの菜乃花はある日職場の桧山から「好き」と伝えられる。桧山は世の女性が憧れるような素敵な男性で菜乃花はこの告白を解くに断る理由もなかったので付き合う事になる。

 

しかし、桧山の束縛が暴走してしまい別れる事になる。

 

ただ別れるだけなら良い物の、職場では菜乃花が体調不良で休んでいた際に「奈乃花が浮気をしていた」という噂が出た。実際に菜乃花は浮気していなかった物の職場で大変人気のある桧山には味方になる人物は居たが、菜乃花の味方は居なかった。

 

桧山も菜乃花が浮気をしているとは思っていなかった物の、その事に対して「どうして俺を頼ってくれないんだ」と怒る。

 

その結果菜乃花は3年勤めていた会社を辞める事になった。

 

会社を辞めてからはずっと部屋に引きこもりの生活を送り食事もほとんど摂らず睡眠も上手く摂れず、身だしなみに気を付ける事もしない自堕落な生活を送っていた。

 

そんな生活を送っている時、いつもはアラームしか鳴らない携帯に誰の番号か分からない着信が入る。その着信は何度も入り、ある日玄関のチャイムの音も鳴った。

 

人に会う事がほとんどなくなった菜乃花。出るか迷ったが訪ねて来た人の足音が遠ざかって行くのが聞こえ、その人に会いたいと思い玄関のドアを開ける。

 

玄関より遠ざかった先にいたのは実家の近所に住んでいた要という9歳下の男の子だった。

 

登場人物

ヒロイン:雪代菜乃花

大学進学と同時に上京し大学卒業後にそのまま東京の会社に就職しOLとなった。物凄く仕事が出来るわけでもなく、容姿も物凄く良いわけでもなくて普通の女性。

 

今の住んでいるマンションは窓から見える景色が気に入ったので選んだ。近所に二階建てのお気に入りのカフェもある。そのカフェで菜乃花は常連のお客様として店主に認識されている。

 

「早く結婚して欲しい」という願望の強い母親が居て、近所に住む修司が母親にとってはお気に入り。なので、菜乃花の母親は修司に上手く取り繕うとするも、修司には好きな人が居た。

 

桧山

菜之花と同じ職場で働いている男性。菜乃花より2歳上。仕事が出来て、容姿も良く菜乃花とは真逆のタイプの人間で取り巻きが出来る程職場の人からは大変人気がある。

 

しかし、職場では大人な姿だった桧山は実際に付き合うと「電話の相手の確認」や「他の男性との会話が許せない」等の束縛が大変強い男性だった。

 

菜乃花の実家の近所に住む高校生の男の子。菜乃花の9歳年下。修司という兄が居て、修司も大学生から東京で住んでおり就職も東京。

 

その2人を見て自分も早く大人になり東京へ行きたい思い、高校は東京の高校へ進学する事にする。東京の高校へ進学する際には中学校の成績が平均より高い水準を維持する等の親との約束ごとがあったが、それを守る程に意思が強い性格をしている。

 

中学校では美術部に所属しており絵を描く事が好きで力強いタッチの絵を描く。

 

横書きの本向けかもしれない

この本は縦書きの本です。しかしながら、読んでいる最中に思ったのは「これ絶対横書きの携帯小説の方が良かったんじゃないの?」という事。

 

携帯小説は文学じゃないという主張をされる方はこの本をオススメできません。しかし、現代に携帯小説というジャンルがあるという事は少なからずジャンルとしては生き残ってるという事です。そこは認めていただきたい。

 

「。」や「!」がやたらと多い文ってのは横書きの携帯小説の方が感情移入出来ると思うんだ、個人的意見ですが。

 

仮にこの本が横書きの本として出版されていたら「届くなら、あの日見た空をもう1度」に私は出会えていなかったと思います。その点を考えるとするのならば携帯小説ではなく文庫本で出てくれた事には多少感謝しています。

 

出会える本はなるべく出会っておきたいからね。

 

接点のない人とは付き合わない方が良い事を教えてくれた

桧山に告白された菜乃花は本当に何となく付き合う事を選びます。告白された際、菜乃花はこう思うのです。

 

お昼を一緒に食べに行ったこともなければ飲みの席でも言葉を交わした記憶もない。

なのに、なんで?

p.14

 

私のような読者は「なのに、なんで付き合う選択をしてしまったんだ」と思った事でしょう。だいたいこういう人は訳ありです。みなさまお気を付けを。

 

桧山が菜乃花を選んだ理由については「一目惚れ」と記載がありますが、個人的には「どこにでもいる菜乃花のような女性は支配しやすいから」という理由で菜乃花を選んだんじゃないかなって思ってます。

 

9歳差について考える

この物語の後半は25歳の菜乃花と高校進学を控えた中学3年生の恋愛物語になります。つまり、9歳差の恋愛です。

 

普通の9歳差の恋愛ならよくあるお話です。現代では2周りの24歳差で結婚する人もちらほら居るぐらいなので9歳差なんて可愛いもんです。

 

けど、要の年齢が約高校1年生の16歳ってのがネックになる。

 

これをすんなり受け入れる人はこの物語に抵抗を持たないはずですが、私はなかなか受け入れられなかった。もう少し年齢が近ければ良かったのになと。具体的には大学生で要が大学入学と共に東京に上京し菜乃花と再会すればまだ受け入れる事が出来た。

 

せめて菜乃花が「かなちゃんが大人になってからもう1回考えて私の事が好きなら…」と濁してエピローグで要が大人になった姿を書いたりする終わり方でも受け入れられたかなと。

 

流石にここまで私自身物語を新に作り上げていたら武井ゆひさんに申し訳ない。ごめんなさい。

 

以前読んだ古宮九時先生の「死を見る僕と、明日死ぬ僕の事件禄」も結構な年齢差だった。もちろん男性が年下で女性が年上。

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よく考えればこちらの作品の主人公とヒロインがそれぞれ要と菜乃花によく似ている。

 

「届くなら、あの日見た空をもう一度」をオススメな人

・一回り年下の男の子との恋愛を許せる人。

年下の男の子と付き合う感覚が分からい人はちょっとこの物語は厳しいかもしれない。逆に年下の男の子大好きな人にはオススメしたい。

 

・純粋な恋愛ストーリーを読みたい人

菜乃花は一応25歳で大人ですが、中身がそこそこに幼い心を所有しています。要はもちろん高校生なので幼い。その2人の恋愛なんですから純粋な真っ白な恋愛ストーリーです。

仲町六絵「おとなりの清明さん~陰陽師は左京区にいる~」感想

仲町六絵先生の「おとなりの清明さん~陰陽師左京区にいる~」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をご遠慮くださいませ。

奥のセーラー服を着た女の子がヒロインの桃花。桃花が抱えて居るネコの名前はミオ。

手前のイケメンが主人公の堀川清明という名前で現代社会に居る安倍晴明

 

話はちょっと飛ぶんですけど2019年の春アニメで「真夜中のオカルト公務員」というアニメが放送されていました。オカルト公務員も安倍晴明の話がちょっと出てて「これは!」と思い購入しました。

 

真夜中のオカルト公務員での主人公と清明の接点は先祖という設定でしたが、「おとなりの清明さん」では先祖や前世とかではなく本物の安倍清明

 

歴女と名乗る程歴史が好きなわけではないのですが、最近は歴史物のライトノベルがあれば手にしたくなる衝動に駆られています。気軽に歴史について多少知れるのがライトノベルの良い所だと思います。全てが史実通りではないという点を除けば歴史を齧る分には丁度良いんじゃないかなと。

 

しかも、表紙絵のようなイケメンな清明さんなら尚更。

 

若干古いお話でかつイラストも若干古い思考なので灰汁のあるイラストですがそんな事お構いなしに私の頭の中では清明さんが美化されていました。

 

最初にこの本がオススメな人を紹介させていただきますが、イケメン世話好き年上男性が好きな人はこの本を読みましょう。千年単位で生きてるのでだいぶ年上ですが。多少生活力無い所だったり人間感が無い所もありますが、それが尚良い。

 

完璧な人より多少完璧じゃない人の方が好きになれるのは私だけじゃないはず。

 

 

あらすじ

ヒロインの桃花が引っ越し先の京都の家のお隣さんは「堀川清明」という名前の男性が1人で住んでいた。大学の先生という事で世間では知られている堀川清明だが、実際は大学の先生ではなく平安時代陰陽師安倍晴明」だった。

 

桃花は堀川清明から安倍晴明である事を伝えられる物の、安倍晴明平安時代陰陽師で生きて居るはずがないので最初は信じなかったが、飼い猫のミオが脱走した際に清明がミオを助けてくれたことにより信じる事になる。

 

登場人物

ヒロイン:糸野桃花

滋賀県に住んでいたが親の仕事の都合で京都へ引っ越す事になった高校1年生。友達と別れる事になるも滋賀県と京都の距離なら電車で直ぐだから平気と思えるぐらいに元気な子。

 

何事に対しても努力家で清明からの何題を投げだす事無く必死に考える子。同時に不満も直ぐに口に出す高校生らしさもある子。

 

ミオという名前の三毛猫を飼育している。

幼少期からリボンが好きで、リボンを入れるためだけのケースが有るほどに好き。髪留めもリボン。桃花自信どうしてこんなにリボンが好きなのか分からない。

 

母の葉子は歴史上の安倍晴明の大ファンでお隣に住む人物の名前が晴明という事を知り大興奮する程にファン。

 

主人公:堀川清明安倍晴明

ヒロインの自宅の隣に住んでいる年齢20歳ぐらいの男性。大学の先生という事に世間ではなっているが、実際は安倍晴明という平安時代陰陽師

 

ちなみに物語の舞台は平安時代ではなく、現代社会。なので平安時代のような服装ではなく常にスーツを着用している。

 

人間では飲めない量のお酒を飲んだり、井戸を使用し移動したり等の行動からも普通の人間のような動きをしない場面が時々見られる。

 

ざっくりとした感想

京都を舞台にした物語です。安倍晴明関連で「真夜中のオカルト公務員」も上記で紹介しましたが、似ている作品としては「京都寺町三条のホームズ」かなぁと。ホームズさんの方が紳士的な人間ですし、ダメな所が少ないとは思いますが。ヒロインの性格はほとんど一緒の印象でした。

こちらもアニメ化された作品なので、おとなりの清明さんを読んでいる最中にはホームズのアニメ声優で脳内再生されていました。

 

いろんなアニメといろんなラノベを読んでいくと「あ、このアニメに似ている」ってなってラノベを読んでいる最中に脳内で音声が再生されていく経験をしているのはきっと私だけではないだろう。

 

第1話「清明さん、猫を助ける」

清明さんと糸野一家が出会うお話です。お隣の清明さんに引っ越しの挨拶をしに行き出会います。その際中に桃花が飼育していたミオという名前の三毛猫が脱走しちゃうんですよね、家から。

 

しかも「猫を虐待する人が付近にいる」という悪い噂も流れてたんです。そうなるとミオも虐待されちゃうって思うわけで桃花は焦ります。

 

表紙の見た目からは想像出来ませんが清明さんはまさかの猫好きでした。動物に縁の無さそうな雰囲気が個人的に読み取れましたが、たぶん清明さんは動物全般に好きでしょうきっと。動物好きの男性って素敵だと思う。

 

清明は「猫探しの協力」を申し出ます。そして、清明の家からは男の子が出てきて「ミオー」と呼び続けます。

 

この男の子は清明が操る式神でした。

 

翌日ミオは無事帰宅し、かつ猫を虐待していた犯人も捕まります。

 

清明は自分の家と糸野家に結界を貼り、そこからミオが出れないようにします。仮に清明さんが猫嫌いだったなら糸野家だけに結界を貼れば良いのですが、清明さんの家までに結界を貼るのです。相当に清明さんは猫好きだよ、絶対。

 

第2話「やすらい祭り」

中町六絵さん「からくさ図書館」シリーズで登場するキャラクター出てくる物語です。

時子と小野篁の2人が登場するのですが、清明さんには負けるけど小野篁もかっこよいはず。是非読んでみたい作品。

 

「やすらい祭り」のメインは付喪神のお話です。

 

からくさ図書館を運営している小野篁が晴明の所へやって来て「着物の男女二人組のあやかしを見かけた」と伝える。

実際に「やすらい祭り」という疫神を退治するお祭りが開催された時に、晴明と桃花はそのあやかしを探しに行きました。そのあやかしは付喪神でした。

 

付喪神ってのは道具に宿る神様ですが、この物語では「足袋型」の付喪神です。なかなかマイナーなチョイスをしたよなぁと思いました。そして、夫婦の付喪神

 

足袋型の付喪神はある都合により燃やされる事になっており、燃やされたくないこの二人の付喪神は脱走して来たのです。そこで、丁度庭に置く石が欲しかった晴明さんはその二人の同意を得て庭に置く石とした。

 

晴明さん、優しい。個人的に晴明さんは篁から話を聞いた際に「きっと足袋型の付喪神が逃げ出したんだろう」という事を予想していたんじゃないかなと思ってる。

第3話「優しい鬼」

妖怪の代表のような存在鬼についてのお話です。

 

ある日ヒロインは町で鬼を見かけます。直ぐに清明さんに電話をし鬼を見かけた事を伝えます。そして、晴明さんは使いを送ると伝えて第1話で登場した式神の双葉がツバメの姿で現れます。

 

この地は、長き戦の地。われに力を与えよや。

p.116

 

こんな事を言いながら歩く鬼を桃花は見かけたのです。しかし桃花は「鬼なのに鬼のパンツ穿いてない」という事を考えるぐらいに余裕はありました。何で怖がらないんだ、不思議。

 

で、この物語の「優しい鬼」は鬼瓦でした。そして、桃花が見かけた鬼も鬼瓦。鬼瓦ってのは家を見守ってくれる見た目が怖い瓦です。

 

その鬼瓦は桃花が町で見かけた翌日、晴明の家で再開します。

 

その鬼瓦の相談内容が優しかった。この鬼瓦の顔は普通の鬼瓦より優しい顔立ちの鬼瓦。もし仮に怖い顔の鬼瓦だったら晴明さんのところには訪れなかった事でしょう。

 

顔が優しい故に守れない事があったので晴明さんの所に来たのです。

 

そこで、晴明さんは墨で鬼瓦の顔に書き足し怖い顔にします。その結果鬼瓦が守りたい物は守る事が出来たのです。

 

この物語の良いところは晴明さんだけじゃなくて他の登場人物も優しい所。同様に優しい物語は「カフェかもめ亭」が浮かびました。

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第4話「おサル戦線異常なし」

サルの名前が大変ややこしい。5話中で1番テンポ悪く読みましたがそれは私の理解力の遅さが理由でしょう、きっと。

 

けど、1番笑えるお話がこの「おサル戦線異常なし」だと個人的には思ってる。

 

登場するのは見た目がサルでも実際は神社を守るサル。以下の四匹の守りサルが登場しますり

 

・飛丸

一番最初に登場したサルです。日吉大社の使いの猿。晴明を平安京サル会議に招待しに来た。

 

・赤山禅右衛門

ダジャレが好きなサル。最近自然界の雌サルに惚れられて困ってるようで実は結構喜んでる可愛らしいサル。

 

出雲路猿田彦

黄色と黒の横縞に日の丸が付いた烏帽子を着用しているサル。この黄色と黒の横縞が「鬼のパンツのようだ」と言われた事がコンプレックスになってる。

 

・猿ヶ辻清麻呂

今回の会議で珍しい桃色の四匹の猿を見かけた事を報告する。

 

最後の清麻呂の見かけた事を「桃色の四匹の猿」について物語が展開します。

 

漢字が多い猿達なんだよね、これが読む上で突っかかって大変だったという事。まぁ、数ページで終わるのでそこだけ神経削られました。

 

第5話「舞妓の神様」

この本の5作品の中で1番優しい物語でした。うつくし御前という神様のお話です。

 

茜という晴明の知り合いのかんざし屋の女性から「物凄い少食の舞妓のまかないさんが居る」という話を聞きます。現代でも少食で生きていける人は居ますが、そのまかないさんは1日に手のひらに乗るぐらいしか食べれないそうで。

 

まかないさんが行く八百屋に晴明さんと桃花が張り込んで、見つけます。そこで、晴明さんが「少食のまかないがうつくし御前」という事を知ります。

 

うつくし御前は綺麗になりたい女性を手助けする優しい神様で、舞妓のまかないをやっている理由も新しく舞妓見習いとして入ってきた子を思っての事でした。

 

しかし、うつくし御前もこのまま少食のままだと古来の言い伝えを信じる上の人に「妖怪じゃないのか」という疑いを持たれて、折角就いたまかないを辞めなければならないかもしれなかった。

 

もちろんこれも晴明さんの陰陽師の術で治ります。無事少食でなくなったうつくし御前は普通の量を食べれるようになるのです。

 

そういう術が陰陽師にあるなら他にももっと面白い術があるんじゃないかなと期待してしまう。

 

きっと桃花も一緒の考えだろう。ただでさえイケメンな顔立ちなのに行動もイケメンなんだぜ、晴明さん。どんな術でも身の危険が多少あってもずっと見ていたい。

 

「おとなりの清明さん~陰陽師左京区にいる~」をオススメな人

・イケメン陰陽師に会いたい人

陰陽師の部分はカットしても良いかなって思ってるのですが、一応。最終的に桃花は晴明に恋心を抱いている雰囲気で終わったので、今後の展開によってはより晴明さんが甘くなると私は信じている。

 

甘い雰囲気の晴明さんを見たいので上手く桃花よ、働いてくれ。

 

・古風な物語に興味がある人

完璧な古風を求めている人はあまりにも蛇足な部分が多すぎてオススメは出来ませんが、何か和風なお話を読みたい人にはオススメしたい。私のような中途半端な歴史オタクは十分に楽しかった。

 

この作品は1冊完結のお話ではなくて続編がいくつか発売されています。桃花がリボンが好きな理由が今回では解明されていないので今後の作品に期待。


 

永田ガラ「内気な美女には野獣を」感想

永田ガラ先生の「内気な美女には野獣を」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

表紙絵の女の子はヒロインの如月そよ子。虎はオスカーという名前のオスの虎。2人共(1人と1匹)可愛いというのが印象。

 

表紙絵が「ザ・ライトノベル」という感じでキャラクターが全面に出てきて読みにくそうで購入するのに実は半年間ぐらい迷ったのですが購入しました。

 

ライトノベル嫌いじゃないんですけどね。寧ろライトノベル好きな人間なんですがあまり強いキャラクター個性が出てくると「何だかなぁ」の雰囲気で読み進めてしまう。

 

永田ガラ先生の作品は以前「信長の茶会」で読み「あぁ、歴史に詳しい作家さんなんだな。」という印象と「何故主にラノベの作品を出版しているメディアワークス文庫からこの作品を出版したのだろうか」という2つの印象を持っていました。

 

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恐らく「信長の茶会」を読んでいる人が少数派だとは思うのですが、仮に「信長の茶会」から読み永田ガラ先生の作品の固定概念を作り上げている人は驚くかもしれません。

 

正直「内気な美女には野獣を」と「信長の茶会」を書いた人が同一人物とはちょっと信じられない。もしかして同姓同名の人なんじゃないかなと疑うレベル。

 

 

あらすじ

如月そよ子の叔母は議員に当選したが急死してしまった。そして、「後継は孫の如月そよ子にしてくれ」という遺言状があったのでそよ子が後継者となる。

 

しかし、そよ子の性格は自分から発言するような性格ではなく、政治についての知識も一切無いが周りに押し切られる形で議員となる。

 

仕事のほとんどを任せていた秘書の平川がある日腰痛のために入院する事になり、代わりにやって来た押川という名の秘書は平川とは違いそよ子に対して厳しい秘書だった。

 

登場人物

ヒロイン:如月そよ子

女優をやっていた母親そっくりの顔で「愛らしすぎる議員」として客寄せパンダのような議員をしていた。つまり、何も発言せず身なりだけを正していた。スケジュールも全て秘書に頼むぐらいに仕事に関心が無かった。

 

それではまずいとそよ子自身は思っていたので時間のある限りは図書館で自信が所属する鳥辺山市の歴史について調べていた。

 

そよ子の気晴らしと言えば市立鳥辺山動物園へ行きトラを見る事だった。その動物園には8匹のトラが居て他の動物園と比較すると大変多い量のトラが居る動物園。

 

そよ子はその8匹の中のトラに1匹自分に似たトラが居る事を知る。そのトラは常に1匹で居るトラだった。そのトラの目の前のベンチでそよ子はお昼ご飯を食べに行く事を楽しみにしていた。

 

平二郎

経営が傾きかけている不動産会社に勤めている。転職を考えて居た矢先に幼馴染から「会社をつをつくるから一緒に働かないか?」という声を掛けられる。

 

その仕事内容は人力車で人を運ぶ事。いわゆる人が動かすタクシー。しかし、なかなか事業が進まないので渋々不動産会社の社員を続けている。

 

押川(オスカー)

動物園のトラ。タビコという子猫が販売している薬により一時的に人となり押川という名前を名乗っている。

 

タビコは永田ガラ先生の別の作品「あなたのために、ネコはゆく」で登場しているタビコと一緒のネコで、タビコが成長して登場しているのが今回の作品「内気な美女には野獣を」です。

 

「市立鳥辺山動物園のトラを削減させる」という事を止める為に人になり、議員に近づくためにそよ子の秘書になった。そして、突然そよ子の秘書を辞めた。

 

ざっくりとした感想

何も考えなくてサラサラーって読んじゃえば面白い。「そよ子ちゃん可愛いー」と「押川かっこいいー」の2つだけ頭に入れて読むとかの領域で読めば本当に面白い作品だと思います。

 

正直面白さだったら以前読んだ永田ガラ先生の作品「信長の茶会」より面白い。けど、「信長の茶会」もそうなんですけど終わり方がちょっと微妙

 

小説ってのは別に全部の内容を回収しなくても良いと思います。そして、回収出来なかった内容は読者の想像にお任せするってので全然良いと思います。けど、そのように著者は上手く仕向けて欲しいという個人的な我儘。申し訳ない。

 

エンディング

「内気な美女には野獣を」の終わり方は押川(オスカー)とそよ子がアナウンサー入門講座で押川が先生、そしてそよ子が生徒として再開します。

 

「わたし、やめなかったもの。ボイストレーニングも、演説の練習も、何もかも

 」

「先生」 p299

 

最初の発言がそよ子。次の発言が押川。この2つの発言の後この物語は終了します。押川がそよ子の元から長期間離れてからの再開です。

 

いわゆる感動の再開っていう終わり方です。

 

普通に「そよ子、再び押川に出会えて良かったね」っと思った。この時に「私立鳥辺山動物園からそよ子が好きだったトラ(オスカー)が鰹﨑動物園へ行く途中に、そのトラが消えた」という事実をそよ子は知っていました。

 

たぶんこのエンディングの時点でそよ子は「押川=オスカー」という事は知らないはずでしょう、きっと。かつそよ子の性格を考えると尚更。

 

読者は「押川=オスカー」という事を知ってるのでどこかもどかしさを感じた事でしょう。少なからず私は思った。

 

 

平二郎登場する必要性あった?

確かに不動産会社としての役を全うする上では必要だと思うし、最後に人力車でそよ子を運ぶ役をする人は物語の繋ぎ上必要だったかもしれない。かつ、1番最初に名前が出るキャラクターはそよ子ではなく平二郎だったりもする。

 

けど、その2つの役をわざわざ平二郎が行わなくても他の名前出て来ないキャラクターが行っても良かったんじゃないかなと。

 

そよ子は最初平二郎が好きでした。最初は「そよ子と二郎の恋愛物語になるのか?」と期待したのです。

 

そして、押川が出てきた事により「押川にも何故か惹かれてしまう」という感じでそよ子のちょっと浮ついている感じが露わになります。

 

確かに付き合っても居ないので、浮気でも何でもないのですが、「一途になれよそよ子!」と思ってしまった。 そよ子自身も二郎の事が好きなはずなのに押川の事を考えてしまって「一途になれよ自分!」って思っていたはず。

 

(なんでわたし、あの人のことばかり考えて居るの)

p.143

 

そよ子の心情です。「あの人=押川」の事です。

 

考えたんですけど、そよ子が押川に惹かれる理由は多少の恋愛感情はあるのかもしれませんがいつも動物園へ行った際に見ていたオスカーなので何となく惹かれたんじゃないかなと。

 

そよ子がオスカーへ惹かれるのは、恋愛感情より友人感情に近い惹かれ方なんだと思う。

 

で、恋愛感情として惹かれているのは二郎なので、自作があるなら二郎との恋愛メインの作品になるんじゃないかなって個人的には予測してます。そして、押川が「なにをグダグダしてるんですか!告白しちゃいなさい!」みたいな感じでそよ子の背中を押してあげて欲しい。

 

その頃にはそよ子は議員じゃなくてアナウンサーに転身出来ているだろうか。現代の蓮舫さんの逆バージョンのようだ。

 

「内気な美女には野獣を」をオススメな人

・イケメンなトラに出会いたい人。

押川(イケメンなトラ)が個人的にはツボでした。トラじゃなくても人の状態で充分イケメンなんですが。

 

上記で「平二郎とくっつけ」と書きましたが、それは私のためでもあります。そよ子と押川がくっついたとしたらその瞬間から私はそよ子を嫉妬の対象として見続ける事でしょう。

 

・引っ込み思案だったヒロインの成長する物語を読みたい人。

恋愛ストーリーよりメインはそよ子の成長物語です。もちろん、押川に出会い押川に恋心(?)寄せなければそよ子は成長しなかったかもしれませんが。

 

物語の最初のそよ子なら砂金議員に「アナウンサーやりませんか?」と言われた際に「いえ、私には出来ませんさようなら」となっていた事でしょう。

 

しかし、自らアナウンサー養成講座を受けに行くまでになりました。大成長で感動してるのに、養成講座の講師が押川で二重に感動できる。

 

 

 

 

九頭竜正志「さとり世代探偵のゆるやかな日常」感想

九頭竜正志先生の「さとり世代探偵のゆるやかな日常」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をご確認くださいませ。

表紙絵が大変穏やかですが、穏やかな内容の物語は序盤まで。序盤も小規模な事件や事故が起きていますし、様々な伏線貼られていて穏やかではない気もしますが。

 

物語の後半で「これはやられたと」思った、正直。

ある意味二度読み必須です。最初から最後まで私はやられました。その結果の二度読み必須です。

 

古宮九時先生の「死を見る僕と、明日死ぬ君の事件禄」で「思い込みで読むのを止めよう」と決めたばかりなのに思いっきり思い込みで読んでいました。

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人間生活でも思い込みによって様々な事件が生じる可能性があるので、なるべく思い込みをしないように生きて行きたいと再び思ったよ。

 

 

 

あらすじ

地元の国立大学に進学した主人公の田中綾高は「これだ!」と思う程のやりたい事が無い。いわゆる世間で言うさとり世代で何事に対しても無気力。

 

綾高は友達の灯影院の提案でサークルは「探偵同好会」に入部する事になる。探偵同好会と言っても本物の探偵が行う浮気調査だったり事件の犯人を捜す事は行わなくて、活動内容は主に小説を書く事。

 

しかし、灯影院は日常の様々な場面で起きた不思議な出来事をあたかも事実のように推理した。そして、最終的には1人の死の原因を推理する。

 

登場人物

田中綾高

「さとり世代」代表の主人公。と言ってもそんなには悟っていない気もする。第2話で綾高が教習所へ免許証を取りに行きますが本物のさとり世代は教習所へ行き運転免許証を取得しようとも思わないはず。

 

綾高が通う大学は「全員何かのサークルに所属しなければならい」という校則があり、友達の灯影院が「探偵同好会を作ろう!」という誘いを受けて探偵同好会の一員になる。

 

主人公に対してこんな事書くのは失礼なんだが、主人公のくせに1番影薄いキャラクターです。あまり感情が彼に入る事が出来なかった。寧ろ逆に他の登場人物の影が濃過ぎるってのもあるのかもしれない。

 

「あやたか」という名前を聞いて真っ先に「綾鷹」が浮かんだからね、申し訳ないけど。

 

現代日本にに生まれて居たら「選ばれたのは綾高でした」って言われていじられていた事でしょう。

 

佐々木灯影院

綾高の友達。

「灯影院」って姓名じゃなくて名前だったのか。という事を物語の後ろから10ページぐらいで分かります。最初に「探偵の苗字は3文字が多い」っていう記載があってそこから「灯影院」が苗字なんだ。って思いましたがまさかの苗字も名前も3文字という。

 

なかなか目立つ名前。確かに小学生の時に「僕の名前はほかげいん」って名乗ると「え?何?もう一回言って?」っていう名前。幼少期の時は恐らくほとんどの場面で「佐々木」という名前を普段名乗っていたはず。

 

けれど綾高が「灯影院という名前は素敵だ」と伝えた事により灯影院が自らの名前に自信を持ち名乗るようになったんじゃないかなと。

 

個人的にキラキラネームの人は電話を代表とする様々な場面で大変そうですが「灯影院」という名前はかっこよいと思ってしまった。私にとって灯影院自体が「さとり世代探偵のゆるやかな日常」で推しの登場人物という事もあり贔屓している可能性もありますが。

 

坂本久生

綾高と灯影院の通っていた高校の文芸部の先輩であり、同じ大学に通っているので大学でも先輩。ボーリングサークルに所属していたが新入生歓迎パーティを行った際にサークルのメンバーが急性アルコール中毒によって亡くなってしまった結果、ボーリングサークルは廃部になった。

 

同好会を作る際にはメンバーが3人必要。綾高と灯影院で2人で1人足りなかったので、灯影院が坂本先輩を誘い探偵同好会に所属する事になる。

 

名前からして男性だと思いませんか。しかし、坂本先輩は女性だったんですよね。

 

上記で「二度読み必須」って書きましたが坂本先輩の性別によって私にとっては二度読み必須になりました。「坂本先輩が女性」という事を頭に入れて読むとまた別の読み方が出来る。

 

正直「坂本先輩が女性」っていう事を気づく場面なんて沢山あったんだけどね!

 

坂本先輩が男性で後半のシリアスな展開に加担していないキャラクターだったら私にとって絶対にこの作品で1番の推しの登場人物にいなっていた。強調しておきますが、男らしさ満載の女性です、坂本先輩は。

 

ざっくりとした感想

会話のテンポが速いのでその点はラノベ感が強いです。そして、「さとり世代探偵のゆるやかな日常」は6話で構成されていますが、第4話まではシリアス感がほとんど感じられなくてコメディの要素で作られています。

 

個人的にはシリアスな話よりかは前半のコメディ要素の強いお話がずっと続いて欲しかったです。笑って読めてる。次作が出るならコメディ要素の短編を詰め込んだ作品をちょっと期待してしまう。

 

もちろん後半のシリアスなお話も好きですが「ふわふわ」っとした感じ最後はまとめられてしまったのが多少残念。ある意味「ゆるやかな日常」という事がよく表現されている。

 

何よりも坂本先輩が一体どうなったのかが気になりました。けれど、どう足掻いても幸せな展開になる事はならないので「ふわふわ」っとした感じで終わらせたのは作者の優しさだと思っています。

 

会話のテンポが速い他のラノベはこちら。

こちらも若干の推理雰囲気がある小説ですが、ほとんどはイケメンパティシエ主人公とケーキ大好きヒロインのほんのり甘いお話。

mikanbook.hatenablog.jp

 

さとり世代とは

さとり世代について詳しい事はWikipediaを見ていただければ良いでしょう、きっと。

ja.wikipedia.org

つまり、私の事です。年代は思いっきり被っています。

 

 「さとり世代」の特徴は「が無い」「恋愛に興味が無い」「旅行に行かない」などが典型例として指摘される

 

この1文がもろ私の事です。厳密に「欲がない」という所では「常にソシャゲをプレイしていたい。」または「常に本を読んでいたい」の2つが有ります。また、「恋愛に興味が無い」という所ではソシャゲの異性キャラクターに恋をしているのでちょっと「もろ」という程ではないのですが。

 

旅行は修学旅行以外で行った事無いからな。基本的出来る限り家に居たい人です。

 

正直私は綾高の考えが分かる人間で恐らく綾高から「探偵同好会」を抜いた大学生活をしていたのは私でしょう。

 

灯影院は綾高と比較すると自ら「探偵同好会作ろうぜ!」と言ったりして活気のあるキャラクターなのでさとり世代感は感じれませんでしたが。

 

また、坂本は思いっきり恋愛を楽しんでいたのでさとり世代ではないでしょう。

この物語の「さとり世代探偵」一体誰なのかイマイチ分からない。

さとり世代という観点から見れば当てはまるのは綾高。探偵という観点から見れば灯影院。主人公は綾高。

 

けど、綾高ってそんなに探偵っぽい事をしていただろうか。

 

最後に確かに綾高は「灯影院がどうして友達として居続けてくれるのか」という事を推理しますがそれは後半の数ページのみ。

 

恐らく灯影院が探偵で綾高は助手という立場だと思いますし、そのような雰囲気の後半に記述があります。

推理が合っているかどうかよりも、助手の求める解答であるかどうかを優先し、推理を捻じ曲げることすら厭わない名探偵

p.360

 

この事からも灯影院が「さとり世代探偵」なのかなと。だったらもっと灯影院悟ってくれよ。あくまで年代的に「さとり世代」に生まれたというだけなのかもしれない。

 

「さとり世代探偵のゆるやかな日常」を読んで物知りになれた

本を書く著者の人は物凄い量の本を読んだり、本以外のデバイスから情報を入手して勉強しています。なので、どの本を読んでも多少「あ、こんな事知らなかった!」という新しい知識に出会えます。

 

一応「さとり世代探偵のゆるやかな日常」はライト文芸の分類に入るのですが、ところどころに「え?これライト文芸で語る話?」と思う程に詳しい話が書かれていました。

 

個人的に勉強になったのは現代で言う「織姫と彦星」の話。この話は第四話の「七夕伝説と、坂本先輩の推理」で登場する話です。織姫と彦星は年に1回しか会えないってのが主に知られている話ですが意外と奥深かった。もちろん私もこの物語を読むまでこの認知だった。

 

「みんな知らないという事を無知の免罪符にしてしまうと、本当に駄目な人間になってしまうぞ」

p.119

 

坂本先輩の発言です。

私は一応社会人ですが小説内の大学生に諭されました。本当に駄目な人間になりつつありますが最善の努力をしたい。

 

あと、私は車の免許を所有してなくて、かつ教習所へ行った事も無いです。なので、「教習所で乗る車の助手席にはブレーキがある」という事もこの本で知れた。自分の無知さがつらいね。

 

著者:九頭竜正志先生について

あまり「この作家が好き!」だとか「この作家が嫌い!」という考えは持たず分け隔てなく多くの作家を読むようにしています、私は。

 

しかし、「さとり世代探偵のゆるやかな日常」を読んで「九頭竜正志先生の他の作品を読んでみたい」っと思ったのですが「さとり世代探偵のゆるやかな日常」以外に本を出されていなくてちょっと残念でした。

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「さとり世代探偵のゆるやかな日常」の発売日が2015年で九頭竜正志先生のデビュー作がこの本。この記事を書いているのは2019年。結構間が空いてるので今後本を出してくれるのかがちょっと心配。出してくれたら入手したい所だけど。

 

「さとり世代探偵のゆるやかな日常」をオススメな人

・変な推理小説を読みたい人

「変な推理小説」って書くと多少の語弊が生じそうですが序盤の灯影院の推理ってのはやっぱり変。そしてその推理を受け入れる主人公の綾高もやっぱり変。

 

けど温まる推理であり笑える推理です。

 

・コメディの中にシリアスがいきなりやって来ても大丈夫な人

正直これが1番重要かなと。半分より少ないぐらいの間コメディの話で、サクサクと読めます。そして、半分以上そこそこに重たいシリアスな内容が現れます。

 

これを「雰囲気ぶち壊し」として評価する人は多いんじゃないかなと。その点においてこの作品は好き嫌いが分れる気がする。私のように雑食読書している人は気にならないと思いますが「この本はこうであるべき」と思いながら読むようなタイプの人はきついと思う。

 

 

 

瀬尾まいこ「強運の持ち主」感想

瀬尾まいこ先生の「強運の持ち主」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂くのをご遠慮くださいませ。

表紙絵が絵本のようで素敵な印象でした。内容は比較的絵本とはかけ離れているように感じましたがほんのり優しさが添付されているようなお話です。

 

世の中は様々な事件や事故で亡くなっている方が毎日のように居ます。その中で今現在私が生きて居れるという事は大変運が良い事なんじゃないでしょうか。と、個人的には常日ごろ思っています。

 

瀬尾まいこ先生の「強運の持ち主」では事故や事件のような重い話は一切取り扱っては居ませんが仮に私が「運が良い人間か、または悪い人間か」の2択を迫られた時には確実に「私は運が良い人間です」と答える事でしょう。

 

個人的に「私運悪い」と思いながら生きるよりかは「私運良い」と生きて居る方が運も寄ってくるんじゃないのかなという考え。運ってのは目に見えないのがつらいね。

 

それでもやっぱり「ただ生きてるだけの幸運」以外にも目の前に1億円ぐらい落ちていてそれを拾い交番へ届け持ち主不明で自分の物になるぐらいの幸運が欲しい。

 

 

あらすじ

OLをやっていた吉田幸子は職場の人間関係の都合上でOLを辞めてしまう。OLを辞めた幸子は営業の仕事で鍛えてきた話術を活かしデパートの一角でルイーズ吉田として占い師を始める。

 

ルイーズ吉田の所には小学生のような若い子からもちろんお年寄りも占いにやって来る。この物語はルイーズ吉田の所へ訪れる人とルイーズ吉田の成長を感じれる物語。

 

ざっくりとした感想

「強運の持ち主」は4つの章で構成されていて、それぞれが微妙に繋がっています。独立したお話ではありません。

 

私自身占いを信じる人間ではありません。めざましテレビの星座占いを昔はよく見て居ましたが「生まれた月によって人生は変わるわけがない」という考えに辿りつきました。血液型も同様。

 

この小説を読むと「占い師の仕事ってインチキみたいな感じなんだ」という偏見が生まれそうですが恐らくそんな事はありません。インチキな占い師もこの世に沢山居ると思いますが、正真正銘の占い師もこの世に存在する事でしょう。

 

少なからず私は占い師に渡すお金は一切ない事が事実なので、今後も占い師にお世話になる事はないでしょう。子どもの姓名判断ぐらいはお金をかけるかもしれませんが、自分には使わない。

 

尚、私は神社へ行った際にお賽銭箱にお金を入れる事すらしないぐらいにお金が無い人です。その割には本は買うんですけどね。年間100冊くらいは買ってるような気がします。読むのに追いついていないのですが。

 

ルイーズ吉田の占いを受けてみたいと思った

上記で書いたように私は現在占いを一切信用しません。信用はしませんが、占った結果悪い結果を入手してしまったらそこそこに落ち込むというのが大半の理由です。

 

どこかで信用させられるんでしょうねぇ、たぶん。

 

しかし、ルイーズ吉田の占いってのは最終的に気持ちよくお客さんを帰らせる事をモットーにしています。つまり「占いの結果で嫌な気持ちにさせない」ってのがモットーという事に言い換えも出来ます。

 

お金を払う程の価値は正直占いには感じないけど仮にお金を払わなくてキャンペーンのような感じなら時間を割いたとしてもルイーズ吉田の占いは受けてみたいね。日ごろの社畜生活が多少元気になれそう。

 

あと文中の「悩みってのは誰かに話したらほとんど解決している」という内容の文章は心に来た。当然の事なんだろうけどその通りだと改めて思ったよ。

 

最後に、私はルイーズが好きだ、それだけ。

 

ニベア

登場人物

・一ノ瀬堅二

ルイーズ吉田の所に占いを頼みに来た小学生の男の子。

 

目次を読んだ時に「ニベアってあのニベア?」と思いました。あのニベアで間違っていません。肌に塗るだけではなく髪の毛にも塗ると効果があるのかもしれないと言われている青い色の入れ物に入っているあのニベアです。

 

幼い頃にお母さんを亡くした堅二のために「お父さんが女装をしてお母さんのフリをする」という泣けるのか笑ってしまうのかそれとも変人なお父さんなのかという3パターンの考えが出来る物語ですが、折り合いをつけて温かいお話だと思ってください。

 

もちろん、幼い間は堅二もお父さんが女装した姿をお母さんと思う事が出来るかもしれませんが、小学生になれば「これはお父さんが女装した姿だ」という事ぐらい分かるのです。

 

なのでルイーズの所に「お父さんかお母さん、どっちを選べば良い?」という占いを頼みます。

 

ここでルイーズの人間の良さが多少出るんですよね。

 

ルイーズの占いの料金は20分で3000円というちょっと小学生には高いお金。しかし、堅二は何度もルイーズの所に占いに行きます。ちょっとそこでルイーズは罪悪感が感じるんですよね。これは次の「ファミリーセンター」の女子高生に対しても同様なんですけど。

 

で、堅二の「お父さんかお母さんどっちを選べばよい?」という占い結果を出すために堅二の家の辺りに張り込んで「お父さんとお母さんは同一人物」という事を知ります。

 

そこまで一般の占い師がやるだろうか?っと思ったのですがそこはルイーズの人間の良さなんだと思う。ルイーズって結構めんどくさがり屋の印象ですが、意外と頼み込んだら何でも行ってくれる優しい人なのかもしれないと思ったよ。

 

あと、個人的「占い師=人間味の無い人間」って思ってたのも影響してると思う。

 

ファミリーセンター

登場人物

・墨田まゆみ

女子高校生。父親が幼い頃に亡くなり、母親に育てられる。そして、母親は再婚し肉親ではない父親と3人で暮らす。

 

よくあるお話がこの「ファミリーセンター」じゃないかなと。

 

私が高校生の時父親と仲良くしたいなんて思った事ないんだけど、このまゆみは違う。ましてや肉親ではない他人と変わらない母親の再婚相手を何とかして気を引こうとするのです。

 

最初は正直「何この生意気な女子高校生。しつこいなぁ」って内心まゆみを嫌っていましたよ、私は。ましてや1回3000円の占いに何度も通ってお金の使い方としてどうなの?この子とも思った。

 

けど、物語の後半からは切実。

 

上記で書いたように女子高校生が何とかしてお父さんの気を引くってのは周りの目を気にする事で話しにくい事です。それは私の実体験です。そこを勇気を出してまゆみはお父さんと買い物に誘ったりして少しずつお父さんの気を引かせるようにします。

 

最終的にお父さんとまゆみの仲がどうなったのか詳しくは書かれていません。しかし、きっと日常会話が前よりかは続いたり、映画を一緒に見て感想を言い合ったりするぐらいの仲に今後なって行った事でしょう。

 

おしまい予言

登場人物

・武田平助

「物事のおしまい」が見える能力を持っている大学生。

 

「強運の持ち主」の4作品の中で私が1番好きな作品がこの「おしまい予言」でした。というより武田平助が好きなだけかもしれない。平助がなかなかの世話焼きの良い性格で「あぁこういう子を一家に一台欲しい子って言うんだろうな」って思ったレベル。三種の神器に将来的に「平助」が入る時代が来るんじゃないかなと。

 

「おしまい予言は」ルイーズの元に武田平助が「おしまいが見える」と言い現れます。

 

世の中のほとんどの物は「はじまりが有り、終わりがある」ものなので平助が一体どの程度までおしまいが見えるのかは分かりませんが、日常生活結構つらいんだろうなぁと。

 

物語の中でお父さんの介護疲れに悩んでいる年配の女性が表れます。そして、平助は「1週間」という数字を言います。

 

この1週間ってのは介護する相手の寿命だったんですけどね。

 

なかなか考えさせられる物語だった。普通だったら「え?何言ってんの?お父さんが一週間後死ぬ?どういう事?」って言いお怒りになる人が多いはず。若しくは落胆するはず。

 

もちろん年配の女性は落胆しました。その後再び女性は現れてお礼を言いに来るんですよね。「残りの1週間心を込めて介護が出来た」と。

 

おしまいが見える事、つまり期限が見えるってのは多少つらい事を幸せにできる事なのかもしれないね。

 

強運の持ち主

・竹子

ルイーズ吉田の所へ弟子入りした一児のシングルマザー。

 

・通彦

ルイーズ吉田の彼氏であり占い的には強運の持ち主。

 

平助の存在により「アシスタントを雇って働こう」と思ったルイーズは師匠のジュリエ青柳の助言の「自分とは真逆の人を雇いなさい」を聞き竹子さんを雇う。

 

最後の「強運の持ち主」は主に竹子さんが成長していく話と竹子さんの占いの実験台になった通彦が転職に迷う話です。

 

最後の最後になかなかスッキリしない物語を入れてきたなぁと正直思いました。続編を期待する物語って程ではないのですが。竹子さんの物語と通彦の転職に悩む話はいっその事分けて書いても良かったんじゃないかなと。

 

盛沢山なのを上手くまとめていますが若干内容の薄さを感じてしまった。あっさりとして読みやすいんですけどね。

 

強運の持ち主は物語上では通彦という事になっていますが実はルイーズじゃないのかな?って個人的に思っています。OLを辞めて占い師という職に就けた事。そして、そこそこに収入を手に入れて生活が出来ている事。かつ、占い師になって彼氏の通彦に出会えた事。

 

幸せじゃん、ルイーズ。ごく普通の生活かもしれないけど幸せじゃない?そう簡単に幸せってやって来ないって私は思ってる。

 

最後の料理音痴の通彦のアボカド豆腐は結構気になる。通彦の料理は正直ほとんど美味しそうじゃないけどアボカド豆腐は美味しんじゃないかなって思ってしまった。

 

「強運の持ち主」をオススメな人

・人間味のある占い師に出会いたい人

「占いなんて胡散臭い!」と思う人は世の中に沢山居ると思います。私も占いは胡散臭いと思っています。

 

けど、ルイーズの占いは直感を大事にしている占い師です。不健康な人には「健康的な食事を心がけなさい」と言うレベルの占い師です。つまり、胡散臭いよりかは「そんなの当然じゃん」というレベルの占いをしてくれる占い師です。

 

「あなたは前世がアリクイだから!もっと野菜を食べなさい」みたいな占いよりかは人間味のある占い師です、ルイーズは。

 

・ちょっとしたゲテモノ料理に出会いたい人

ルイーズの彼氏の通彦の料理がゲテモノとまでは行きませんが「いや、絶対不味いだろそれ」という料理を作ります。将来的には「通彦の料理」という内容の本が出版されるんじゃないかなと思うレベルのインパクトのある料理を作ってくれています。

 

 

 

村山早紀「カフェかもめ亭」感想

村山早紀先生の「カフェかもめ亭」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

表紙絵の人が私的に「イケメンな男性だ!」と思い購入しました。そして、最初は「イケメンな男性がカフェを経営しているとかこのカフェ行きたい」と思っていましたが、途中で女性のマスターという事をし、1人で落胆したのは私です。

 

いや、イケメンな男性じゃなくて、ちょっと男前な女性かよ!!ってなったからね。

 

比較的に私はラノベ中心に読み、ラノベの選び方は表紙と裏表紙のあらすじを軽く読んで買うのですが、完全に今回は表紙のが「イケメン」という理由で購入したのでその点は残念だった。

 

内容は素敵だった事には変わりはないので気にしてはなりません。

 

 

あらすじ

海辺の町の風早の町には喫茶店「カフェかもめ亭」がある。ヒロインはかもめ亭のマスター。ヒロインの曾祖父がかもめ亭の初代のマスターでかもめ亭は70年近く営業している歴史ある喫茶店

 

茶店には自動演奏ピアノが置いて有り、営業時間中には様々な音楽が奏でられています。また、壁には様々な絵が飾られています。また、マスター自身も絵を描く事が好きで大学は美術大学へ通っていました。

 

かもめ亭には様々なお客様が来店されます。そのお客様のお話は少し不思議なお話をされます。そのお話が「喫茶店かもめ亭」の物語。

 

大まかな感想

「カフェかもめ亭」は本編が7作品。番外編1作品の合計8作品の短編集です。私が1番好きだったお話は「ねこしまさんのお話」

 

全体的に優しいお話だけが詰め込まれています。例え社畜の生活で毎日疲れている私のような人間でも癒されます。出来たら実際にかもめ亭へ行き「紅茶系でオススメのが飲みたいです!」と言いくつろぎたい。

 

何よりも、著者の村山早紀先生が優しい性格なんじゃないかなと。恐らく石川啄木みたいな人ではないでしょう、きっと。

 

上記でも書きましたが私のように社畜でソシャゲクリアに追われている人間ではこんなにも繊細で、かつその繊細さの中は全て優しさの文章は書けません。残酷な文章ばかりならば書く事が出来るかもしれません。

 

そんな私が「カフェかもめ亭」を読むと心が浄化されたよ。常日頃疲れて人の事なんて1分も考えたくはない私ですが、周りの人に対して少しでも優しく対応しようと考えた。

 

しかし、明日からの社畜生活で「人に優しくする」という事を忘れてしまう事でしょうけど、この物語を読んだ後は少なからず人に優しくしようと思ったのでよし。

 

また、優しさだけではなくちょっとだけ悲しいお話もあります。その悲しいお話がより物語の優しさを誇張しているのです。

 

砂漠の花

登場人物

・澪子さん

美術部に所属している女子高校生。

 

文化祭の絵に向けてその絵に使用する青色を探している澪子。単純に澪子は凄いよなぁと。私自身イラストにあまり興味は無いので感覚が違うかもしれませんが適当に色を混ぜてそれっぽい青を作ってしまえば「よし、こんなもんで良いだろう」と考えて使用するはず。

 

高校生の絵に懸ける思いまたは、画家が絵に懸ける思いは凄い。

 

澪子の探している青は生まれ変わる前の記憶、つまり前世の頃に見た青色。主人公に「マスターって生まれ変わりって信じます?」という澪子の発言から澪子の前世の話が始まります。

 

私は前世の記憶が一切ないので信じれなくてごめんなさい。「カフェかもめ亭」のお話の中ではマスターが前世を信じているかどうかの発言が一切無いのが優しい。

 

澪子の前世は砂漠の世界。澪子はその砂漠の世界で幸せに暮らしたのではなく、家族に捨てられてしまい、砂漠の中を歩いていたのです。行きついた先が小さいオアシスのような所でした。そこで見かけたのが「今にも咲きそうな花」でした。

 

その花の色が青色。そして、澪子が探している青はその花の色の青でした。

 

かもめ亭にはポスターが貼ってあり澪子が「このポスターの花の色が私の前世で見た花の色に似ている」という展開。

 

運命だね、これは。澪子と澪子が探していた青をマッチングさせるという。

 

もしかしたらかもめ亭に入り浸っていれば運命の相手という名の結婚相手ともマッチング出来る可能性があると内心思った。

 

万華鏡の庭

登場人物

・寺嶋さん(仮)

「寺嶋雑貨店」という雑貨店で海外の商品の輸入と販売を行っている。

 

・あずさ

病気で学校に行けない男の子。

 

「万華鏡の庭」は寺嶋さんが幼少期にお父さんの知り合いのお家へ頂いたビワのおすそ分けをした際に出会ったあずさと出会ったお話です。「カフェかもめ亭」の中では優しいお話というより不思議なお話でした。

 

幼少期の寺嶋さんは確かに当時ビワを届けてあずさにも出会い、そこであずさの持っている万華鏡を見たのですが、大学生になってからあずさの家を訪ねるとそこにはあずさの家は無くなっていたのです。

 

そこには「あずさの所有していた万華鏡のガラス片」と思われる物が落ちて居て実際に現在の寺嶋さんの手にも落ちていたガラス片を拾った際に入ってしまったガラス片が輝いているのです。

 

あずさの家が「蜃気楼のようにあった」という記載があったので、より謎が深まる。かなり昔に家は火事で焼失していたという近所の人からの情報も有り、その家は「幼少期の寺嶋さんの憧れている家を見せてくれた」という夢をかなえるだけに登場した家なのかもしれない。

 

そのように考えると大変優しいお話。

 

銀の鏡

登場人物

・柳さん

「不可思議屋」という名前の骨董店を営んでいる老人

 

・真由子

中学2年生で学校でいじめを受けている女の子

 

個人的に1番苦手なお話でした。確かに骨董店を営んでいる柳さんは優しい人。しかし、真由子が鏡の中に入っておしまい。という終わり方が個人的に「何だかなぁ」となってしまった。

 

そのまま真由子は行方不明の扱いをされるのですが、何とかして現実世界に戻って来て、真由子がいじめられない世界になって欲しかった。現実だったら確実に柳さんが疑われてしまうと思うのですが、そういう描写シーンが無い点が本当に優しい。

 

「カフェかもめ亭」が書かれたのが2001年で、書かれてから結構な時間が経過していますが、現代のいじめ問題にも通ずるお話でした。「不可思議屋」の柳さんのように家族以外の誰かが優しく話を聞ける人がこの世にどんどん増えれば良いのにね。

 

その世界が来たらいじめが例え無くならないとしても、いじめを受けている子が逃げれる場所が出来てちょっと幸せになれる。

 

水仙

登場人物

・ゆき

 かもめ亭に飾ってあった水仙を見て昔の初恋の記憶を思い出した淑女。

 

・光三

ゆきの初恋の相手。現在はゆきの旦那

 

・さよ

ゆきの姉。病弱で家から滅多に出れないので両親から寵愛を受けていた。

 

「カフェかもめ亭」の物語の中には実際に「物語を書く人」が2人出て居ます。その1人が「水仙姫」の登場人物の1人のさよ。もう1人は「ねこしまさん」の童話作家。2人も優しい物語を書いています。

 

ゆきと光三の恋愛がさよの考えたとされる「水仙池で思いを伝えれば叶う」という物語で成功するお話でした。さよはその後病が悪化して亡くなるのですが、亡くならずにさよも幸せなルートへ行ってほしかった。

 

「カフェかもめ亭」の物語って優しさが確かに詰まっているのですが、登場人物全員が幸せにならないってのがちょっとつらいね。トータルが幸せになってるので納得してしまう面が沢山あるのですが。

 

グリーン先生の魔法

登場人物

・亜里子

元気な女の子。

 

・曜子

病弱で学校を休んでいる女の子。病気の体質で太陽の光を浴びる事が出来ないので外にはめったに出れない。

 

・グリーン先生

獣医の知識を保有している博学な人。

 

グリーン先生が個人的にイケメンすぎてつらいお話でした。登場人物の紹介で「獣医の知識を保有している人」というアバウトな書き方をしましたが、物語の中でもあまり細かい人物紹介はされていません。亜里子に会う度に様々なお話をする人で、様々な知識を保有している人とは考えられます。

 

「グリーン先生の魔法」で登場する亜里子と曜子のイメージは「アルプスの少女ハイジ」のハイジとクララという感じでほとんど間違ってないと思います。違うのは曜子は歩けるけど、体が病弱で引きこもりという点のみ。

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ねこしまさんのお話

登場人物

・ねこしまさん(チャールズ)

公園のベンチから動かない茶色いとら猫で捨て猫。チャールズという名前は捨てた飼い主が付けた名前。

 

・かおるちゃん

小学4年生の時、ねこしまさんに出会い救われた女の子。現在は美術系の付属高校に合格し絵描きに夢中になっている。

 

・ひろの先生

フリースクールの先生。昼間に公園に居る小学生のかおるちゃんに声をかけて出会う。そして、かおるちゃんはひろの先生のフリースクールに通う事になった。

 

優しさの塊のお話。他の話は誰かが不慮の事故で亡くなってたり多少悲しい所が有りますが、「ねこしまさんのお話」はねこしまさん以外は誰も亡くなっていなくて、みんなハッピーエンド。

 

強いて言うなら、ねこしまさんのフリをした童話作家がかもめ亭に通いにくくなったぐらいじゃないでしょうか。実際に童話作家がこの先もかもめ亭に自ら通いにくい状態が続けばこの童話作家は「カフェかもめ亭」のお話の中で1番優しい人認定したい。

 

根底には「猫捨てるな」という話が流れている気がする。ねこしまさんの死因は外での生活になれてなかった故に、風邪を引いてしまい悪化した結果死んでしまったのです。ねこしまさんが仮に捨てられずに元の飼い主の所でチャールズとして生活出来たとしたらもっと長生き出来たんだろうなぁと考えると多少心が痛む。

 

かもめ亭奇談

登場人物

・マスター

とても濃い霧の日に来店されたお客さんについて話していた曾祖父の話を思いだそうとしていた。

 

・人魚のお客様

外国人の見た目をしたお客さん。しかし、中身は人魚だった。

 

「カフェかもめ亭」の中で1番マスターが出るお話です。多少マスターが可愛い子と言う印象が持つ事が出来るお話でもあります。外国人の相手に必死で「えぇとどういうんだっけ?」と考えて居る辺り可愛すぎませんか。

 

また、あまり語られなかったマスターの過去についても知る事が出来ます。

 

この外国人の見た目をした人魚のお客さんはマスターの曾祖父に恋をしていて、今でも叔父に心を馳せているマスターよりも可愛い可能性のある人魚です。

 

ちょっと悲しいよね、人魚と人間の寿命の差ってのは。もちろん既にマスターの曾祖父亡くなっています。かつ、人魚と人間ってのは結ばれる事がなかなか難しいわけで。

 

番外編・クリスマスの国

登場人物

・神崎ゆきと

アニメ監督をしていたが、病気のために辞めた。今回かもめ亭を訪れるのが初めて。

 

・暁

神崎ゆきとのいとこ。村長の息子で、将来は村長になる予定だった。

 

・アリス

父親が亡くなり、暁の家の蔵で暮らしている吸血鬼の女の子。明るい中では行動は出来ないが、血は吸わなくても生きて行ける。

 

ゆきとや暁、アリスの3人が出会った田舎がダムとなり物語は終わりました。個人的には「世の中どうしようもない事もある」という事を何故か再認識させられたお話。そんな事を認識させるお話ではないはずなんですけどね。

 

どう頑張っても「国がこの村をダムにする!」と言ったらどうしようもないじゃない、ほとんどのパターンは。

 

何よりもアリスの行方が気になって仕方がないのです。アリスは「吸血鬼は長い時間の休息が必要」という事で暁の家が所有している蔵で眠り続けていた可能性があるので、誰かが起こさない限り、または自発的に起きない限りアリスも村がダムになってしまう際に溺死してしまっているはず。

 

村山早紀さんはここまで優しい物語を書いてきたわけなので、アリスもきっと生きて居るはずですが。

 

この物語ではかもめ亭のマスターの発言の1つに「アニメーションは魔法だ」という発言がありました。京都アニメーションの凄惨な事件がこの「カフェかもめ亭」を読む前に起きたのも有り、この発言は心に来た。

ja.wikipedia.org

 

私にとっては村山早紀先生の大変繊細な表現で、文章のみで読者の頭の中に情景を浮かばせる事も一種の魔法だと思う。

 

「カフェかもめ亭」をオススメな人

・短いファンタジー小説を読みたい人

「カフェかもめ亭」は長編小説ではなく、短いお話が8作品入っているので「長いファンタジー小説はちょっと」という方にはオススメ。

 

また、単純に「長いお話は集中力切れる」という人にもオススメ

 

・少年少女に戻りたい人

「生まれ変わり」・「猫だけど実は人間」・「お姫様」・「吸血鬼」等の様々な空想上または現実的に考えられない内容が沢山書かれています。

 

現実的な考えの人は「こんなのありえない」と言いスパっと切り取られそうですが、「こんなのありえない」を楽しめるのが「カフェかもめ亭」です。

 

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杉井光「終わる世界のアルバム」感想

杉井光先生の「終わる世界のアルバム」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

 

表紙絵の女の子はヒロインの水島奈月じゃないかなと。最初はもう1人ヒロインっぽい女の子の莉子なのかなぁ?っと思っていましたがたぶん奈月であっていると思います。

 

文中では「奈月の髪は黒」という記載があったので、「表紙絵の女の子黒じゃないし!じゃあ誰だよ!」っとなりました。

 

周りに散っている写真は主人公のマコが撮影した写真です。カラー写真なので、恐らくマコが主に使用していた旧式のカメラで自分で現像するカメラではなく、デジカメで撮影した写真でしょう。

 

奈月と出会ってからはデジカメで写真を撮っていたので、その辺りからも写真の女の子は奈月と特定が出来そうです。

 

 

あらすじ

人が突然消えるようになった。しかし、周りの人は消えた人の記憶を一切覚えていない。その世界から「死」が無くなった世界で中学3年生の主人公のマコは写真を撮り続ける。手軽なデジカメではなく、旧式の古いカメラの白黒の写真を自分で現像している。

 

マコがデジカメではなく、旧式のカメラに拘る理由は、旧式のカメラで写真を撮影し、その写真に写っている人が例え世界から消えたとしてもマコは消えた人の記憶を覚えているから。

 

マコは毎日登校した際に「このクラスに消えた人は居ない事」を確認するために教室内の机の数を数える事を日課としている。中学校卒業間近の2月のある日、1つ机が増えている事に気づいたマコ。

 

その机を使用している生徒はマコには一切記憶になかった奈月であった。マコだけではなく、他の生徒も奈月の事は名前だけは覚えているけど、他の事は一切覚えていないようだった。

 

マコは奈月の写真を撮った事が無いので何とか撮影を試みようとするものの奈月は極端に写真に写る事を嫌っていた。マコは不思議に思ったが、マコと奈月は2人で公園でラジオを聞く程の仲になっていく。

 

登場人物

主な登場人物以下の3人。

 

主人公:マコ

ヒロイン:水島奈月

主人公とヒロインの同級生:莉子

 

上記の3人は全員中学3年生。取り扱っている題材が大変重く、その中の世界観に居るメインの登場人物は誰も中学生には思えなかったので、私の中では全員高校3年生に昇格されています。

 

他にも「写真部の顧問の先生の須藤先生」や「カメラ屋のおじさん」、「DJサトシ」を代表とする登場回数は少ないものの印象に残るキャラクターが出て居ました。

 

須藤先生は私好みのイケメンな先生。カメラ屋のおじさんはかなり性格がひねくれているけど、優しいおじさんなんだと思う。一度消えたんじゃないかと思ったDJサトシが最後に復活してくれて私は大変嬉しかった。

 

もう1人印象深いキャラクターとしては莉子のお母さんの恭子さんでしょうか。読んでいる途中で「恭子さんは消えてしまうのではないか?」と思いながら読んでいて案の定消えてしまった時は失望感しかなかった。

 

かつ、莉子が何となく「誰かが消えてしまったのではないか?」と勘づいている事に涙が出そうになったよ。明確に「大切な家族が消えてしまった」という事が分からないけど、薄っすら「誰かが消えたのではないか?」と思いながらこの先も莉子は生きて行くと考えると悲しい。

 

主人公:マコ

「死」が無くなった世界で亡くなった人の記憶を持ち続ける事が出来る。写真部に所属していて、部員はマコ1人。両親は既に消えているが、両親の記憶ももちろん所有している。

 

一体どういう気持ちで生きて居るんだろうね、と考えると悲しくなれる。主人公が淡々と人の死を受け入れるがこれは「人の死を見慣れている」わけではなく、淡々と受け入れないと精神的に参ってしまからかなと。

 

また、マコの性格が多少ひねくれてたのが良かった。最初の写真部顧問の須藤先生との会話やカメラ屋のおじさんとの会話はずっと見ていても飽きないはず。

 

けど、マコのひねくれた性格もこの「人の死を覚えている能力」のためじゃないかと考えると心が痛む。

 

ヒロイン:水島奈月

突然現れたクラスメイト。最後まで詳しい事があまり書かれていなくてこの物語の謎さと静かさが強調されるヒロイン。

 

主人公もそうですが、ヒロインの奈月の性格も好き嫌いが分れそうな性格でちょっと我儘な所が有ります。主人公が奈月の事を「水島さん」と呼んだ時に「その呼び名はやめて!」と怒ったり、一方的に怒ったりする女の子でもしかして消えかけ都合で情緒不安定になってしまったのではないかなと考えたりもしました。

 

それでも最後は主人公に謝るので「このツンデレが!」と思っていました。

 

我儘な女の子が好きな方は奈月はオススメ出来る。似てる性格のキャラクターとして思い浮かべたのは「とらドラ!」の逢坂大河

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莉子

マコの隣の家に住んでいるマコの幼馴染で、昔はマコの写真のモデルを行っていたと自らは言っている。奈月が消える前は友達で、世界に再び現れた時も奈月とは友達で卒業までの1ヶ月間一緒に買い物へ行くぐらい仲が良かった。

 

料理が下手で、恐らく家事全般苦手。吹奏楽部に所属している。

 

最初は莉子がヒロインになるのかなーと思いながら読んでいて、性格も明るくてヒロイン感を漂わせていました。

 

「終わる世界のアルバム」を読み終えて

「大変面白い!」と言える作品ではない。メディアワークス文庫ライトノベルの分類。個人的にはライトノベル大半がハッピーエンドという偏見を持ちながら読んでいました。

 

けど、終始一貫としてバットエンドの雰囲気が漂っていました。その中に奈月とマコの淡い恋愛要素が入っているので、その部分がより際立つ。

 

そして、最終的には奈月も世界から消えてしまうという心悲しい結果になるのです。

 

マコが奈月と深い間柄という事を思い出してからの奈月が消えてしまうという。かつ、マコは最後まで奈月の写真を撮影する事は出来ませんでした。

 

一応、マコは写真を現像しなくても奈月の記憶をずっと覚えている雰囲気の終わり方だったので、奈月にとってはハッピーエンドだったのは唯一の救い。

 

それでもマコは苦しいだろうなぁと。

 

世界から「死」が消えるという事

厳密に書くと「世界から死が消えた」と書くよりも「死んだ事を忘れてしまう世界」の方が正しいのかなと。確実に人は消えて死んでしまったと同じようになってしまっているので。

 

「人が死んだ事を忘れる」って良い事なのか悪い事なのか「終わる世界のアルバム」を読み終えて2日間ちょっと考えたのですが答えがなかなか出ませんでした。良い事も悪い事も亡くなった相手の事を全て忘れてしまう事になるのですが、どうなんでしょうね。

 

マコみたいに覚え続ける事も素敵な事だと思うけど、大切な人の死によって日常生活もままならないぐらいに落ち込む人も居るわけで。仮に私が後者なら「頼むからこの記憶を忘れさせてくれ」と思う事でしょう。

 

「何も前触れもなく人が消える」というのは不条理ですが、「大切な人の死だけではなく、大切な人そのものを忘れる」という事が出来るのはある意味幸せなのかもしれない。

 

DJサトシ復活

最後にDJサトシが復活するんですよね、この物語。途中からラジオで流されていたDJサトシのコーナーが無くなり、奈月とマコはDJサトシが世界から消えたと思っていたのですが。

 

もしかして、と考えたのは後半のシーンでDJサトシの自宅と思われる場所で奈月とマコは仮眠を摂ります。そして、そのDJサトシの自宅から出る際に奈月は所有していたCDを置いて出て行くのです。

 

その結果、再びDJサトシが復活したんじゃないかなと。こじつけた理由ですが、やはり私は一度DJサトシは世界から一度消えかけた、または消えて再び世界に戻って来たのだと思っています。

 

難解な作品

いろいろと分かりませんでした!というのが第一声の感想。杉井光先生の他の代表作は以下の作品。

 

神様のメモ帳

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実は両方共私は以前読んだ事があるのですが、こんなに難解な作品を書く人だったっけなぁ?と正直思いました。杉井光さんは正直比喩が独特で読み手によって好き嫌いが分れるかもしれません。今回はその独特の比喩によってより難解になっていた可能性は十分にある。

 

「終わる世界のアルバム」で不明な状態で終わったのは大まかに2点。

 

・どうして世界から人の死が消えたのか

最後に海へ行きこの謎が解決するんじゃないかな?と思いましたが謎が解決する事はありませんでした。

 

確かに「大切な人の死」というのは残された人にとっては大変苦痛な事で忘れ去った方が精神的にも良いのかもしれない。けれど、この物語では病気でも何でもないのに人が突然消えてしまう。そして、残された人は消えてしまった人の記憶も忘れている。

 

消えた人の記憶が無くなる点は「神様が消しゴムでかき消した」という主人公の推測がされているがちょっと納得できなかった。

 

この荒廃しきった世界で神様がいて、この荒廃しきった世界を作り上げているのが神で、私が主人公の立場なら神を呪うよ。

 

・1度消えかけた奈月がどうして再び残ったのか

そして奈月は物語の最後に再び消えてしまうわけですが。何故奈月は1度消えてしまったのか。そして、どのようにしてその1度消えかかったのを繋ぎとめる事が出来たのか。

 

また、奈月とマコはどういった関係だったのか。恐らく大変親しい関係だったとは思うのですがあまり深くは書かれていませんでした。

 

ある意味「明確にし過ぎない」という点で読者の想像力を活かす内容で素敵かもしれないです。しかし、「人の死がまるでなかった様な世界」という壮大な着眼点の物語を1冊で終わらせるのは勿体ない!と思いました。続編が出て様々な謎な点が回収される事を個人的には願っている。

 

出来たら粛々と終わりに近づく世界を主人公または莉子の力で食い止めて欲しい。また、今まで消えた人が再び世界に戻れたら尚良い。

 

「終わる世界のアルバム」をオススメな人

・綺麗にまとまった作品を読みたい人

大変難解な作品と書きましたが、そこはやっぱり杉井光先生の力で綺麗にまとまっています。かつ、杉井光先生の独特な世界は全開で切なさは半端ない。

 

・洋楽が好きな人

私は全く洋楽を聞かないので分かりませんが、「終わる世界のアルバム」の中では様々な洋楽が登場しています。私が唯一分かったのはビートルズ

 

申し訳ないのですが、その他のミュージシャンは誰一人として分からなかったので曲名とミュージシャン名を聞いて「あ、この曲だ!」と分かる人は「終わる世界のアルバム」は面白いかなと。

 

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