瀬尾まいこ「強運の持ち主」感想

瀬尾まいこ先生の「強運の持ち主」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂くのをご遠慮くださいませ。

表紙絵が絵本のようで素敵な印象でした。内容は比較的絵本とはかけ離れているように感じましたがほんのり優しさが添付されているようなお話です。

 

世の中は様々な事件や事故で亡くなっている方が毎日のように居ます。その中で今現在私が生きて居れるという事は大変運が良い事なんじゃないでしょうか。と、個人的には常日ごろ思っています。

 

瀬尾まいこ先生の「強運の持ち主」では事故や事件のような重い話は一切取り扱っては居ませんが仮に私が「運が良い人間か、または悪い人間か」の2択を迫られた時には確実に「私は運が良い人間です」と答える事でしょう。

 

個人的に「私運悪い」と思いながら生きるよりかは「私運良い」と生きて居る方が運も寄ってくるんじゃないのかなという考え。運ってのは目に見えないのがつらいね。

 

それでもやっぱり「ただ生きてるだけの幸運」以外にも目の前に1億円ぐらい落ちていてそれを拾い交番へ届け持ち主不明で自分の物になるぐらいの幸運が欲しい。

 

 

あらすじ

OLをやっていた吉田幸子は職場の人間関係の都合上でOLを辞めてしまう。OLを辞めた幸子は営業の仕事で鍛えてきた話術を活かしデパートの一角でルイーズ吉田として占い師を始める。

 

ルイーズ吉田の所には小学生のような若い子からもちろんお年寄りも占いにやって来る。この物語はルイーズ吉田の所へ訪れる人とルイーズ吉田の成長を感じれる物語。

 

ざっくりとした感想

「強運の持ち主」は4つの章で構成されていて、それぞれが微妙に繋がっています。独立したお話ではありません。

 

私自身占いを信じる人間ではありません。めざましテレビの星座占いを昔はよく見て居ましたが「生まれた月によって人生は変わるわけがない」という考えに辿りつきました。血液型も同様。

 

この小説を読むと「占い師の仕事ってインチキみたいな感じなんだ」という偏見が生まれそうですが恐らくそんな事はありません。インチキな占い師もこの世に沢山居ると思いますが、正真正銘の占い師もこの世に存在する事でしょう。

 

少なからず私は占い師に渡すお金は一切ない事が事実なので、今後も占い師にお世話になる事はないでしょう。子どもの姓名判断ぐらいはお金をかけるかもしれませんが、自分には使わない。

 

尚、私は神社へ行った際にお賽銭箱にお金を入れる事すらしないぐらいにお金が無い人です。その割には本は買うんですけどね。年間100冊くらいは買ってるような気がします。読むのに追いついていないのですが。

 

ルイーズ吉田の占いを受けてみたいと思った

上記で書いたように私は現在占いを一切信用しません。信用はしませんが、占った結果悪い結果を入手してしまったらそこそこに落ち込むというのが大半の理由です。

 

どこかで信用させられるんでしょうねぇ、たぶん。

 

しかし、ルイーズ吉田の占いってのは最終的に気持ちよくお客さんを帰らせる事をモットーにしています。つまり「占いの結果で嫌な気持ちにさせない」ってのがモットーという事に言い換えも出来ます。

 

お金を払う程の価値は正直占いには感じないけど仮にお金を払わなくてキャンペーンのような感じなら時間を割いたとしてもルイーズ吉田の占いは受けてみたいね。日ごろの社畜生活が多少元気になれそう。

 

あと文中の「悩みってのは誰かに話したらほとんど解決している」という内容の文章は心に来た。当然の事なんだろうけどその通りだと改めて思ったよ。

 

最後に、私はルイーズが好きだ、それだけ。

 

ニベア

登場人物

・一ノ瀬堅二

ルイーズ吉田の所に占いを頼みに来た小学生の男の子。

 

目次を読んだ時に「ニベアってあのニベア?」と思いました。あのニベアで間違っていません。肌に塗るだけではなく髪の毛にも塗ると効果があるのかもしれないと言われている青い色の入れ物に入っているあのニベアです。

 

幼い頃にお母さんを亡くした堅二のために「お父さんが女装をしてお母さんのフリをする」という泣けるのか笑ってしまうのかそれとも変人なお父さんなのかという3パターンの考えが出来る物語ですが、折り合いをつけて温かいお話だと思ってください。

 

もちろん、幼い間は堅二もお父さんが女装した姿をお母さんと思う事が出来るかもしれませんが、小学生になれば「これはお父さんが女装した姿だ」という事ぐらい分かるのです。

 

なのでルイーズの所に「お父さんかお母さん、どっちを選べば良い?」という占いを頼みます。

 

ここでルイーズの人間の良さが多少出るんですよね。

 

ルイーズの占いの料金は20分で3000円というちょっと小学生には高いお金。しかし、堅二は何度もルイーズの所に占いに行きます。ちょっとそこでルイーズは罪悪感が感じるんですよね。これは次の「ファミリーセンター」の女子高生に対しても同様なんですけど。

 

で、堅二の「お父さんかお母さんどっちを選べばよい?」という占い結果を出すために堅二の家の辺りに張り込んで「お父さんとお母さんは同一人物」という事を知ります。

 

そこまで一般の占い師がやるだろうか?っと思ったのですがそこはルイーズの人間の良さなんだと思う。ルイーズって結構めんどくさがり屋の印象ですが、意外と頼み込んだら何でも行ってくれる優しい人なのかもしれないと思ったよ。

 

あと、個人的「占い師=人間味の無い人間」って思ってたのも影響してると思う。

 

ファミリーセンター

登場人物

・墨田まゆみ

女子高校生。父親が幼い頃に亡くなり、母親に育てられる。そして、母親は再婚し肉親ではない父親と3人で暮らす。

 

よくあるお話がこの「ファミリーセンター」じゃないかなと。

 

私が高校生の時父親と仲良くしたいなんて思った事ないんだけど、このまゆみは違う。ましてや肉親ではない他人と変わらない母親の再婚相手を何とかして気を引こうとするのです。

 

最初は正直「何この生意気な女子高校生。しつこいなぁ」って内心まゆみを嫌っていましたよ、私は。ましてや1回3000円の占いに何度も通ってお金の使い方としてどうなの?この子とも思った。

 

けど、物語の後半からは切実。

 

上記で書いたように女子高校生が何とかしてお父さんの気を引くってのは周りの目を気にする事で話しにくい事です。それは私の実体験です。そこを勇気を出してまゆみはお父さんと買い物に誘ったりして少しずつお父さんの気を引かせるようにします。

 

最終的にお父さんとまゆみの仲がどうなったのか詳しくは書かれていません。しかし、きっと日常会話が前よりかは続いたり、映画を一緒に見て感想を言い合ったりするぐらいの仲に今後なって行った事でしょう。

 

おしまい予言

登場人物

・武田平助

「物事のおしまい」が見える能力を持っている大学生。

 

「強運の持ち主」の4作品の中で私が1番好きな作品がこの「おしまい予言」でした。というより武田平助が好きなだけかもしれない。平助がなかなかの世話焼きの良い性格で「あぁこういう子を一家に一台欲しい子って言うんだろうな」って思ったレベル。三種の神器に将来的に「平助」が入る時代が来るんじゃないかなと。

 

「おしまい予言は」ルイーズの元に武田平助が「おしまいが見える」と言い現れます。

 

世の中のほとんどの物は「はじまりが有り、終わりがある」ものなので平助が一体どの程度までおしまいが見えるのかは分かりませんが、日常生活結構つらいんだろうなぁと。

 

物語の中でお父さんの介護疲れに悩んでいる年配の女性が表れます。そして、平助は「1週間」という数字を言います。

 

この1週間ってのは介護する相手の寿命だったんですけどね。

 

なかなか考えさせられる物語だった。普通だったら「え?何言ってんの?お父さんが一週間後死ぬ?どういう事?」って言いお怒りになる人が多いはず。若しくは落胆するはず。

 

もちろん年配の女性は落胆しました。その後再び女性は現れてお礼を言いに来るんですよね。「残りの1週間心を込めて介護が出来た」と。

 

おしまいが見える事、つまり期限が見えるってのは多少つらい事を幸せにできる事なのかもしれないね。

 

強運の持ち主

・竹子

ルイーズ吉田の所へ弟子入りした一児のシングルマザー。

 

・通彦

ルイーズ吉田の彼氏であり占い的には強運の持ち主。

 

平助の存在により「アシスタントを雇って働こう」と思ったルイーズは師匠のジュリエ青柳の助言の「自分とは真逆の人を雇いなさい」を聞き竹子さんを雇う。

 

最後の「強運の持ち主」は主に竹子さんが成長していく話と竹子さんの占いの実験台になった通彦が転職に迷う話です。

 

最後の最後になかなかスッキリしない物語を入れてきたなぁと正直思いました。続編を期待する物語って程ではないのですが。竹子さんの物語と通彦の転職に悩む話はいっその事分けて書いても良かったんじゃないかなと。

 

盛沢山なのを上手くまとめていますが若干内容の薄さを感じてしまった。あっさりとして読みやすいんですけどね。

 

強運の持ち主は物語上では通彦という事になっていますが実はルイーズじゃないのかな?って個人的に思っています。OLを辞めて占い師という職に就けた事。そして、そこそこに収入を手に入れて生活が出来ている事。かつ、占い師になって彼氏の通彦に出会えた事。

 

幸せじゃん、ルイーズ。ごく普通の生活かもしれないけど幸せじゃない?そう簡単に幸せってやって来ないって私は思ってる。

 

最後の料理音痴の通彦のアボカド豆腐は結構気になる。通彦の料理は正直ほとんど美味しそうじゃないけどアボカド豆腐は美味しんじゃないかなって思ってしまった。

 

「強運の持ち主」をオススメな人

・人間味のある占い師に出会いたい人

「占いなんて胡散臭い!」と思う人は世の中に沢山居ると思います。私も占いは胡散臭いと思っています。

 

けど、ルイーズの占いは直感を大事にしている占い師です。不健康な人には「健康的な食事を心がけなさい」と言うレベルの占い師です。つまり、胡散臭いよりかは「そんなの当然じゃん」というレベルの占いをしてくれる占い師です。

 

「あなたは前世がアリクイだから!もっと野菜を食べなさい」みたいな占いよりかは人間味のある占い師です、ルイーズは。

 

・ちょっとしたゲテモノ料理に出会いたい人

ルイーズの彼氏の通彦の料理がゲテモノとまでは行きませんが「いや、絶対不味いだろそれ」という料理を作ります。将来的には「通彦の料理」という内容の本が出版されるんじゃないかなと思うレベルのインパクトのある料理を作ってくれています。