村山早紀「カフェかもめ亭」感想

村山早紀先生の「カフェかもめ亭」を読みました。ネタバレを含む感想を書いているのでネタバレが苦手な方はお読み頂く事をお控えくださいませ。

表紙絵の人が私的に「イケメンな男性だ!」と思い購入しました。そして、最初は「イケメンな男性がカフェを経営しているとかこのカフェ行きたい」と思っていましたが、途中で女性のマスターという事をし、1人で落胆したのは私です。

 

いや、イケメンな男性じゃなくて、ちょっと男前な女性かよ!!ってなったからね。

 

比較的に私はラノベ中心に読み、ラノベの選び方は表紙と裏表紙のあらすじを軽く読んで買うのですが、完全に今回は表紙のが「イケメン」という理由で購入したのでその点は残念だった。

 

内容は素敵だった事には変わりはないので気にしてはなりません。

 

 

あらすじ

海辺の町の風早の町には喫茶店「カフェかもめ亭」がある。ヒロインはかもめ亭のマスター。ヒロインの曾祖父がかもめ亭の初代のマスターでかもめ亭は70年近く営業している歴史ある喫茶店

 

茶店には自動演奏ピアノが置いて有り、営業時間中には様々な音楽が奏でられています。また、壁には様々な絵が飾られています。また、マスター自身も絵を描く事が好きで大学は美術大学へ通っていました。

 

かもめ亭には様々なお客様が来店されます。そのお客様のお話は少し不思議なお話をされます。そのお話が「喫茶店かもめ亭」の物語。

 

大まかな感想

「カフェかもめ亭」は本編が7作品。番外編1作品の合計8作品の短編集です。私が1番好きだったお話は「ねこしまさんのお話」

 

全体的に優しいお話だけが詰め込まれています。例え社畜の生活で毎日疲れている私のような人間でも癒されます。出来たら実際にかもめ亭へ行き「紅茶系でオススメのが飲みたいです!」と言いくつろぎたい。

 

何よりも、著者の村山早紀先生が優しい性格なんじゃないかなと。恐らく石川啄木みたいな人ではないでしょう、きっと。

 

上記でも書きましたが私のように社畜でソシャゲクリアに追われている人間ではこんなにも繊細で、かつその繊細さの中は全て優しさの文章は書けません。残酷な文章ばかりならば書く事が出来るかもしれません。

 

そんな私が「カフェかもめ亭」を読むと心が浄化されたよ。常日頃疲れて人の事なんて1分も考えたくはない私ですが、周りの人に対して少しでも優しく対応しようと考えた。

 

しかし、明日からの社畜生活で「人に優しくする」という事を忘れてしまう事でしょうけど、この物語を読んだ後は少なからず人に優しくしようと思ったのでよし。

 

また、優しさだけではなくちょっとだけ悲しいお話もあります。その悲しいお話がより物語の優しさを誇張しているのです。

 

砂漠の花

登場人物

・澪子さん

美術部に所属している女子高校生。

 

文化祭の絵に向けてその絵に使用する青色を探している澪子。単純に澪子は凄いよなぁと。私自身イラストにあまり興味は無いので感覚が違うかもしれませんが適当に色を混ぜてそれっぽい青を作ってしまえば「よし、こんなもんで良いだろう」と考えて使用するはず。

 

高校生の絵に懸ける思いまたは、画家が絵に懸ける思いは凄い。

 

澪子の探している青は生まれ変わる前の記憶、つまり前世の頃に見た青色。主人公に「マスターって生まれ変わりって信じます?」という澪子の発言から澪子の前世の話が始まります。

 

私は前世の記憶が一切ないので信じれなくてごめんなさい。「カフェかもめ亭」のお話の中ではマスターが前世を信じているかどうかの発言が一切無いのが優しい。

 

澪子の前世は砂漠の世界。澪子はその砂漠の世界で幸せに暮らしたのではなく、家族に捨てられてしまい、砂漠の中を歩いていたのです。行きついた先が小さいオアシスのような所でした。そこで見かけたのが「今にも咲きそうな花」でした。

 

その花の色が青色。そして、澪子が探している青はその花の色の青でした。

 

かもめ亭にはポスターが貼ってあり澪子が「このポスターの花の色が私の前世で見た花の色に似ている」という展開。

 

運命だね、これは。澪子と澪子が探していた青をマッチングさせるという。

 

もしかしたらかもめ亭に入り浸っていれば運命の相手という名の結婚相手ともマッチング出来る可能性があると内心思った。

 

万華鏡の庭

登場人物

・寺嶋さん(仮)

「寺嶋雑貨店」という雑貨店で海外の商品の輸入と販売を行っている。

 

・あずさ

病気で学校に行けない男の子。

 

「万華鏡の庭」は寺嶋さんが幼少期にお父さんの知り合いのお家へ頂いたビワのおすそ分けをした際に出会ったあずさと出会ったお話です。「カフェかもめ亭」の中では優しいお話というより不思議なお話でした。

 

幼少期の寺嶋さんは確かに当時ビワを届けてあずさにも出会い、そこであずさの持っている万華鏡を見たのですが、大学生になってからあずさの家を訪ねるとそこにはあずさの家は無くなっていたのです。

 

そこには「あずさの所有していた万華鏡のガラス片」と思われる物が落ちて居て実際に現在の寺嶋さんの手にも落ちていたガラス片を拾った際に入ってしまったガラス片が輝いているのです。

 

あずさの家が「蜃気楼のようにあった」という記載があったので、より謎が深まる。かなり昔に家は火事で焼失していたという近所の人からの情報も有り、その家は「幼少期の寺嶋さんの憧れている家を見せてくれた」という夢をかなえるだけに登場した家なのかもしれない。

 

そのように考えると大変優しいお話。

 

銀の鏡

登場人物

・柳さん

「不可思議屋」という名前の骨董店を営んでいる老人

 

・真由子

中学2年生で学校でいじめを受けている女の子

 

個人的に1番苦手なお話でした。確かに骨董店を営んでいる柳さんは優しい人。しかし、真由子が鏡の中に入っておしまい。という終わり方が個人的に「何だかなぁ」となってしまった。

 

そのまま真由子は行方不明の扱いをされるのですが、何とかして現実世界に戻って来て、真由子がいじめられない世界になって欲しかった。現実だったら確実に柳さんが疑われてしまうと思うのですが、そういう描写シーンが無い点が本当に優しい。

 

「カフェかもめ亭」が書かれたのが2001年で、書かれてから結構な時間が経過していますが、現代のいじめ問題にも通ずるお話でした。「不可思議屋」の柳さんのように家族以外の誰かが優しく話を聞ける人がこの世にどんどん増えれば良いのにね。

 

その世界が来たらいじめが例え無くならないとしても、いじめを受けている子が逃げれる場所が出来てちょっと幸せになれる。

 

水仙

登場人物

・ゆき

 かもめ亭に飾ってあった水仙を見て昔の初恋の記憶を思い出した淑女。

 

・光三

ゆきの初恋の相手。現在はゆきの旦那

 

・さよ

ゆきの姉。病弱で家から滅多に出れないので両親から寵愛を受けていた。

 

「カフェかもめ亭」の物語の中には実際に「物語を書く人」が2人出て居ます。その1人が「水仙姫」の登場人物の1人のさよ。もう1人は「ねこしまさん」の童話作家。2人も優しい物語を書いています。

 

ゆきと光三の恋愛がさよの考えたとされる「水仙池で思いを伝えれば叶う」という物語で成功するお話でした。さよはその後病が悪化して亡くなるのですが、亡くならずにさよも幸せなルートへ行ってほしかった。

 

「カフェかもめ亭」の物語って優しさが確かに詰まっているのですが、登場人物全員が幸せにならないってのがちょっとつらいね。トータルが幸せになってるので納得してしまう面が沢山あるのですが。

 

グリーン先生の魔法

登場人物

・亜里子

元気な女の子。

 

・曜子

病弱で学校を休んでいる女の子。病気の体質で太陽の光を浴びる事が出来ないので外にはめったに出れない。

 

・グリーン先生

獣医の知識を保有している博学な人。

 

グリーン先生が個人的にイケメンすぎてつらいお話でした。登場人物の紹介で「獣医の知識を保有している人」というアバウトな書き方をしましたが、物語の中でもあまり細かい人物紹介はされていません。亜里子に会う度に様々なお話をする人で、様々な知識を保有している人とは考えられます。

 

「グリーン先生の魔法」で登場する亜里子と曜子のイメージは「アルプスの少女ハイジ」のハイジとクララという感じでほとんど間違ってないと思います。違うのは曜子は歩けるけど、体が病弱で引きこもりという点のみ。

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ねこしまさんのお話

登場人物

・ねこしまさん(チャールズ)

公園のベンチから動かない茶色いとら猫で捨て猫。チャールズという名前は捨てた飼い主が付けた名前。

 

・かおるちゃん

小学4年生の時、ねこしまさんに出会い救われた女の子。現在は美術系の付属高校に合格し絵描きに夢中になっている。

 

・ひろの先生

フリースクールの先生。昼間に公園に居る小学生のかおるちゃんに声をかけて出会う。そして、かおるちゃんはひろの先生のフリースクールに通う事になった。

 

優しさの塊のお話。他の話は誰かが不慮の事故で亡くなってたり多少悲しい所が有りますが、「ねこしまさんのお話」はねこしまさん以外は誰も亡くなっていなくて、みんなハッピーエンド。

 

強いて言うなら、ねこしまさんのフリをした童話作家がかもめ亭に通いにくくなったぐらいじゃないでしょうか。実際に童話作家がこの先もかもめ亭に自ら通いにくい状態が続けばこの童話作家は「カフェかもめ亭」のお話の中で1番優しい人認定したい。

 

根底には「猫捨てるな」という話が流れている気がする。ねこしまさんの死因は外での生活になれてなかった故に、風邪を引いてしまい悪化した結果死んでしまったのです。ねこしまさんが仮に捨てられずに元の飼い主の所でチャールズとして生活出来たとしたらもっと長生き出来たんだろうなぁと考えると多少心が痛む。

 

かもめ亭奇談

登場人物

・マスター

とても濃い霧の日に来店されたお客さんについて話していた曾祖父の話を思いだそうとしていた。

 

・人魚のお客様

外国人の見た目をしたお客さん。しかし、中身は人魚だった。

 

「カフェかもめ亭」の中で1番マスターが出るお話です。多少マスターが可愛い子と言う印象が持つ事が出来るお話でもあります。外国人の相手に必死で「えぇとどういうんだっけ?」と考えて居る辺り可愛すぎませんか。

 

また、あまり語られなかったマスターの過去についても知る事が出来ます。

 

この外国人の見た目をした人魚のお客さんはマスターの曾祖父に恋をしていて、今でも叔父に心を馳せているマスターよりも可愛い可能性のある人魚です。

 

ちょっと悲しいよね、人魚と人間の寿命の差ってのは。もちろん既にマスターの曾祖父亡くなっています。かつ、人魚と人間ってのは結ばれる事がなかなか難しいわけで。

 

番外編・クリスマスの国

登場人物

・神崎ゆきと

アニメ監督をしていたが、病気のために辞めた。今回かもめ亭を訪れるのが初めて。

 

・暁

神崎ゆきとのいとこ。村長の息子で、将来は村長になる予定だった。

 

・アリス

父親が亡くなり、暁の家の蔵で暮らしている吸血鬼の女の子。明るい中では行動は出来ないが、血は吸わなくても生きて行ける。

 

ゆきとや暁、アリスの3人が出会った田舎がダムとなり物語は終わりました。個人的には「世の中どうしようもない事もある」という事を何故か再認識させられたお話。そんな事を認識させるお話ではないはずなんですけどね。

 

どう頑張っても「国がこの村をダムにする!」と言ったらどうしようもないじゃない、ほとんどのパターンは。

 

何よりもアリスの行方が気になって仕方がないのです。アリスは「吸血鬼は長い時間の休息が必要」という事で暁の家が所有している蔵で眠り続けていた可能性があるので、誰かが起こさない限り、または自発的に起きない限りアリスも村がダムになってしまう際に溺死してしまっているはず。

 

村山早紀さんはここまで優しい物語を書いてきたわけなので、アリスもきっと生きて居るはずですが。

 

この物語ではかもめ亭のマスターの発言の1つに「アニメーションは魔法だ」という発言がありました。京都アニメーションの凄惨な事件がこの「カフェかもめ亭」を読む前に起きたのも有り、この発言は心に来た。

ja.wikipedia.org

 

私にとっては村山早紀先生の大変繊細な表現で、文章のみで読者の頭の中に情景を浮かばせる事も一種の魔法だと思う。

 

「カフェかもめ亭」をオススメな人

・短いファンタジー小説を読みたい人

「カフェかもめ亭」は長編小説ではなく、短いお話が8作品入っているので「長いファンタジー小説はちょっと」という方にはオススメ。

 

また、単純に「長いお話は集中力切れる」という人にもオススメ

 

・少年少女に戻りたい人

「生まれ変わり」・「猫だけど実は人間」・「お姫様」・「吸血鬼」等の様々な空想上または現実的に考えられない内容が沢山書かれています。

 

現実的な考えの人は「こんなのありえない」と言いスパっと切り取られそうですが、「こんなのありえない」を楽しめるのが「カフェかもめ亭」です。

 

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